一次的逸脱とは、周りからレッテルを貼られる前に起きる、最初の小さな規則やぶりのことです。
犯罪学用語辞典
更新日 2026-10-04
犯罪学用語辞典は、犯罪学でよく使う用語を、一文の定義でまとめたページです。英語名も一緒に載せています。
01基本の用語
犯罪学とは、犯罪を社会の現象としてとらえ、法がつくられること・法が破られること・それに社会が反応することを、データと方法にもとづいて調べる学問のことです。
犯罪とは、法律が刑罰を定めている行為のことです。何が犯罪になるかは法律で決まり、法律の改正によって時代とともに変わります。
犯罪心理学とは、犯罪や非行を、個人の心の働きや発達から説明しようとする心理学の分野のことです。犯罪学の一部を担っています。
02統計の用語
認知件数とは、警察が発生を認知した事件の数のことです。犯罪白書や警察の統計で、犯罪の量を表す基本の数字として使われます。
発生率とは、人口10万人あたりの認知件数のことです。人口の違う年や地域どうしを比べるときに使います。
検挙件数とは、警察などが検挙した事件の数のことです。検察官に送った件数のほか、微罪処分にした件数なども含みます。
検挙率とは、検挙件数を認知件数で割り、100を掛けた割合のことです。前の年に認知した事件の検挙も含むため、100%を超えることがあります。
犯罪白書とは、法務省の法務総合研究所が毎年まとめる、犯罪の情勢と罪を犯した人の処遇の実情を報告する白書のことです。
暗数とは、実際に起きたのに警察などに知られず、統計の認知件数に入らない犯罪のことです。
犯罪被害実態(暗数)調査とは、住民に犯罪の被害に遭った経験と、警察に届けたかどうかを直接たずね、暗数を含めた被害の実態を調べる調査のことです。日本では法務総合研究所が2000年から行っています。
被害申告率とは、犯罪の被害に遭った人のうち、警察などの捜査機関に被害を届けた人の割合のことです。
精神障害者等とは、犯罪白書などの統計で使われる言葉で、精神障害のある人と、精神障害の疑いのある人を合わせた呼び方のことです。2023年に刑法犯で検挙された人のうち、精神障害者等は0.7%でした。
03研究法の用語
自己申告調査とは、人々に自分が過去にした違反や非行を匿名でたずね、統計に表れない犯罪や非行を調べる方法のことです。
縦断研究とは、同じ人たちを長い年月追いかけて、何度も調べる研究方法のことです。犯罪の始まり・続き方・終わり方を調べるのに使われます。
ランダム化比較試験とは、対象をくじ引きのように無作為に2つ以上のグループに分け、取り組みを行うグループと行わないグループを比べて効果を確かめる方法のことです。
対照群とは、調べたい集団と比べるために用意する、条件の近い別の集団のことです。違いが本当にあるかを確かめるために欠かせません。
双生児研究とは、遺伝子がほぼ同じ一卵性の双子と、平均して半分ほどを共有する二卵性の双子の似かたを比べ、遺伝と環境の影響の大きさを調べる研究方法のことです。
遺伝率とは、ある集団の中の個人差のうち、遺伝の違いで説明される割合のことです。一人ひとりの行動の何割が遺伝で決まるかを示すものではありません。
ダニーデン研究とは、ニュージーランドのダニーデンで1972〜73年に生まれた1037人を、誕生から追い続けている縦断研究のことです。子どものころの自己統制と大人になってからの犯罪や健康との関係を示しました。
メタ分析とは、同じ問いを調べた多くの研究の結果を集め、まとめて計算して全体の傾向を確かめる方法のことです。
04環境犯罪学の用語
ホットスポットとは、犯罪が集中して起きている、交差点や街区などの小さな場所のことです。
日常活動理論とは、犯罪をしようとする人、ふさわしい標的、見守る人の不在の3つが、同じ時と場所にそろったときに犯罪が起きると考える理論のことです。
状況的犯罪予防とは、犯罪が起きる場面の条件を変えて、犯罪を難しく、割に合わないものにすることで防ぐ方法のことです。
防犯環境設計とは、建物・道路・公園などの設計を工夫して、見通しをよくしたり侵入しにくくしたりすることで、犯罪を起こりにくくする考え方のことです。
割れ窓理論とは、割れた窓のような小さな秩序の乱れを放っておくと、地域の見守りが弱まり、より深刻な犯罪を招くと考える理論のことです。
ふさわしい標的とは、日常活動理論で、犯罪をしようとする人から見て狙いやすい人や物のことです。
有能な監視者とは、日常活動理論で、警察官に限らず、家族や隣人、通行人など、その場にいて犯罪を止められる人のことです。
動機のある人とは、日常活動理論で、犯罪をする気持ちと、それを実行する力をもつ人のことです。
合理的選択の視点とは、犯罪をする人も、限られた時間と情報の中で得と損を見比べて行動を選んでいる、と考える見方のことです。
犯罪の転移とは、防犯の対策によって、犯罪が別の場所・時間・標的・手口・種類へ移ってしまう現象のことです。
利益の拡散とは、防犯の対策の効果が、対象にしていない場所や物、時間にまで広がる現象のことです。
守りやすい空間とは、建築家ニューマンが1972年に唱えた、住民が家のまわりの通りや廊下などを見守り、管理できるように造られた空間のことです。
自然監視とは、窓の配置や照明、見通しのよい植栽などによって、周りの人の目が自然に届くようにする工夫のことです。
領域性とは、舗装や植栽、柵などで境目をはっきりさせ、住む人が「自分たちの場所」だと感じられるようにする工夫のことです。
犯罪の集中の法則とは、都市や年が違っても、犯罪の一定の割合(例えば半分)が集まる場所の割合が狭い幅に収まるという、ワイスバードが2015年に示した考え方のことです。
場所の犯罪学とは、人ではなく、通りの一区画や住所などの小さな場所に注目して犯罪を調べる研究分野のことです。
05理論の用語
古典学派とは、人は得と損を考えて行動するという前提に立ち、明確でつり合った刑罰によって犯罪を防ごうとした、18世紀の犯罪と刑罰の考え方のことです。
実証主義とは、犯罪の原因を、観察や測定などの科学的な方法で明らかにしようとする、19世紀後半に広まった立場のことです。
抑止とは、刑罰を受けるおそれによって、人が犯罪をするのを思いとどまらせる働きのことです。
緊張理論とは、社会が大切にする目標と、それを手に入れる正当な手段とのずれが、人を犯罪へ向かわせる圧力になると考える理論のことです。
分化的接触理論とは、犯罪のやり方や犯罪を正当化する考え方は、身近な人との交流の中で学習されると考える、サザーランドの理論のことです。
ラベリング理論とは、周りから「犯罪者」「非行少年」というレッテルを貼られることが、その人をさらに逸脱へ向かわせることがあると考える理論のことです。
一般予防とは、罪を犯した人を罰することで、社会のほかの人々が罪を犯さないようにする、刑罰の働きのことです。
特別予防とは、罪を犯した本人が、ふたたび罪を犯さないようにする、刑罰の働きのことです。
生来性犯罪者とは、生まれつき犯罪をする性質を持ち、体の特徴で見分けられるとされた人のことです。ロンブローゾが唱えた説で、ゴーリングの検証などにより現在は否定されています。
先祖返り(アタビズム)とは、人類の遠い祖先や動物の特徴がその人に再び現れることです。ロンブローゾは犯罪の原因をこれで説明しようとしましたが、科学的な根拠はありません。
一般抑止とは、罰の脅しによって、社会の人々全体に犯罪を思いとどまらせる効果のことです。
特別抑止とは、実際に罰を受けた本人が、その経験によって犯罪をくり返さなくなる効果のことです。研究では、刑務所の経験にこの効果はほとんど見られていません。
遺伝と環境の相互作用とは、同じ環境や経験でも、遺伝子の型によって影響の受け方が変わることです。子どものころの虐待とMAOA遺伝子の研究が代表例ですが、この種の研究は追試で確かめられないことも多くあります。
自己統制とは、目先の欲求や衝動をおさえ、長い目で見た目標に向けて行動や感情をととのえる力のことです。セルフコントロールとも呼ばれ、その低さを犯罪の中心的な原因とみる理論もあります。
衝動性とは、よく考える前に、思いついたまま行動してしまう傾向のことです。自己統制の反対の性質として扱われます。
同心円地帯理論とは、バージェスが1925年に示した、都市は中心の商業地区から外へ輪のような5つの地帯に分かれて広がるという考え方のことです。ショウとマッケイは、これを使ってシカゴの非行の分布を調べました。
社会解体とは、地域が共通の価値を実現できず、住民どうしで行動を見守り正す力が弱まった状態のことです。ショウとマッケイは、貧しさ・住民の出入りの多さ・さまざまな出身の人が混じることを、その手がかりとしました。
集合的効力とは、近所の人どうしの信頼と、地域のために行動しようとする意思を合わせたもののことです。サンプソンらは1997年、シカゴの343の地域で、集合的効力が高いほど暴力が少ないことを示しました。
アノミーとは、成功という目標ばかりが強調されて手段のルールが軽んじられ、社会のルールが人の行動をまとめる力を失った状態のことです。
適応様式とは、マートンが、社会の目標と正当な手段をそれぞれ受け入れるかどうかで人の対応を分けた、同調・革新・儀礼主義・逃避主義・反抗の5つの型のことです。
一般緊張理論とは、目標に届かないことに加え、大切なものを失うことやいやな扱いを受けることも緊張とし、それが生む怒りなどの感情が犯罪につながると考える、アグニューの理論のことです。
社会的学習理論とは、サザーランドの分化的接触理論をもとに、バージェスとエイカーズが、ほめられる・罰される・まねるといった学ぶしくみを加えて発展させた理論のことです。
分化強化とは、ある行動でほめられるか罰されるかの差し引きによって、その行動がくり返されたり、やめられたりするしくみのことです。
愛着とは、社会的絆理論の4つの絆の1つで、親・先生・友だちなど身近な人との心のつながりと、その人たちにどう思われるかを気にかける気持ちのことです。
投資(コミットメント)とは、社会的絆理論の4つの絆の1つで、勉強や仕事で積み上げてきたものや将来の目標があり、それを失う危険をおかしたくないと思う気持ちのことです。
巻き込みとは、社会的絆理論の4つの絆の1つで、勉強・部活・仕事などふつうの活動に時間がふさがり、非行をする暇がない状態のことです。
犯罪の一般理論とは、ゴットフレッドソンとハーシが1990年に示した、自己統制の低さを犯罪の中心的な原因とし、自己統制は子どものころのしつけで育つと考える理論のことです。
二次的逸脱とは、「非行少年」などのレッテルを貼られた後、周りの反応を受けて続いていく逸脱のことです。
06発達の用語
ライフコース犯罪学とは、子どもから大人までの人生の流れの中で、犯罪がいつ始まり、どう続き、どうやんでいくのかを調べる分野のことです。
年齢犯罪曲線とは、年齢ごとの犯罪の多さを表したグラフのことです。多くの社会で、10代後半から20代前半に高くなり、その後は下がっていく形になります。
デジスタンスとは、犯罪を繰り返していた人が、犯罪をしない生活へ移っていく過程のことです。
親の見守りとは、子どもがどこで誰と何をしているかに親が目を配り、把握しようとすることのことです。
子どもの自己開示とは、子どもが自分のしたことや気持ちを、たずねられなくても自分から親に話すことのことです。
07被害者の用語
被害者学とは、犯罪の被害に遭う人の特徴や被害の影響、被害者への支援などを研究する分野のことです。
反復被害とは、一度犯罪の被害に遭った人や場所が、短い期間のうちに再び被害に遭うことです。
08少年の用語
少年非行とは、20歳未満の少年による犯罪や、法に触れる行為などのことです。日本では少年法にもとづいて扱われます。
09刑事司法の用語
起訴とは、検察官が裁判所に対して、被疑者を裁判にかけるよう求めることです。
裁判員制度とは、国民の中から選ばれた裁判員が、裁判官と一緒に重大な刑事事件の裁判に参加する制度のことです。2009年に始まりました。
ダイバージョンとは、罪を犯した少年などを正式な手続きに乗せず、注意や支援プログラムなどの別の対応に回すことです。
ゼロ・トレランスとは、軽い違反も見逃さず、厳しい取り締まりで地域の秩序を保とうとする警察の方針のことです。
10更生の用語
保護観察とは、罪を犯した人や非行のある少年が社会の中で立ち直れるよう、保護観察官と保護司が指導や支援を行うことです。
仮釈放とは、刑務所に入っている人を、刑期が終わる前に条件付きで社会に戻し、保護観察を受けながら生活させる制度のことです。
再犯とは、罪を犯した人が、ふたたび罪を犯すことです。
11犯罪の種類の用語
特殊詐欺とは、電話をかけるなどして対面せずに相手を信頼させ、指定した口座への振込みなどの方法で、不特定多数の人から現金などをだまし取る犯罪のことです。
サイバー犯罪とは、コンピュータやインターネットを使った犯罪、またはコンピュータそのものを狙う犯罪のことです。
12生物・心理の用語
物質乱用とは、薬物やアルコールを、健康や生活に害が出るほど使うことです。精神病と暴力の研究では、リスクの高まりの多くが物質乱用の重なりで説明されるとされています。
スティグマとは、病気や障害などをもとにした偏見や決めつけのことです。精神障害を「危ない」と結びつける見方は、その代表的な例です。
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社会的絆理論とは、人が犯罪をしないのは家族・学校・地域などとの絆があるからであり、その絆が弱まると犯罪が起きやすくなると考える、ハーシの理論のことです。