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第7章 発達・ライフコース犯罪学 ・ レッスン7-2

青年期限定型と生涯持続型。2つの道すじ

約5分 ・ 公開日 2026-10-04

このレッスンの問い

10代で万引きや夜遊びをした少年は、大人になっても犯罪を続けると思いますか?

読む前に、答えを少しだけ予想してみてください。当たっていなくても大丈夫です。

前のレッスンの復習(1問)

本文に入る前に、前のレッスンを思い出してみましょう。

レッスン7-1から

Q1. 前のレッスンの復習です。2023年の日本で、刑法犯の検挙人員の人口比(10万人あたり)がいちばん高かった年齢層はどれでしょう?

答えを見る

正解: 1. 16・17歳
16・17歳が約352人で最多でした。10代で急に上がり、その後ゆっくり下がる山の形を、年齢犯罪曲線と呼びました。

0110代の非行には2つの道すじがある

10代の非行の中には、子どものころから続く少数の人と、10代だけの多数の人が混ざっています。

10代の非行は、ほかの年代よりずっと多くなります。けれども、大人になっても犯罪を続ける人は、そのうちの一部です。

1993年、アメリカの心理学者モフィットは、この2つの事実をつなぐ理論を発表しました。10代の非行には、別々の原因をもつ2つの集団が混ざっているという考えです。

1つは、幼いころから問題行動が続く少数の集団で、生涯持続型と呼びます。もう1つは、10代のあいだだけ非行をする多数の集団で、青年期限定型と呼びます。

ダニーデン研究の男子では、生涯持続型は1割未満、青年期限定型は約4分の1でした。10代での非行の量は、2つの集団でほとんど変わりませんでした。

022つの集団は、原因が違う

生涯持続型は子どものころの発達と家庭の困難から、青年期限定型は10代特有の「大人とのずれ」から生まれると考えられています。

生涯持続型の子は、幼いころから子育ての環境、ことばや注意の発達、気質の面で困難をかかえていました。一方、青年期限定型の子は、これらがほぼ平均的でした。

では、平均的な子がなぜ10代で非行をするのでしょうか。モフィットは、体は大人に近づくのに、社会では子どもとして扱われる時期のずれに注目しました。これを成熟のギャップと呼びます。

たとえば、中学生が先輩をまねて夜遅くまで出歩くのは、「大人のようにふるまいたい」気持ちの表れでもあります。大人の役割を得ると、こうした行動は自然に減っていくと考えられています。

03その後の追跡と、運命ではないこと

追跡では予想に近い違いが見られましたが、どちらの集団も一人ひとりの将来を決めるものではありません。

2002年の報告では、26歳の時点で、生涯持続型は暴力犯罪や薬物、仕事やお金の問題が最も多くなっていました。青年期限定型は程度が軽いものの、財産犯や物質依存の問題が残っていました。

子どものころは攻撃的でも、10代の非行は少なかった第3の集団もいました。この人たちは26歳で、軽い犯罪を続け、不安や孤立をかかえていました。

26〜38歳に有罪判決を受けたのは、生涯持続型の55%、青年期限定型の30%でした。裏を返せば、生涯持続型の約半数はこの期間に有罪判決を受けていません。

どちらの型かは、長い追跡のあとで振り返って分けたものです。研究者は、子どものころの支援と、非行をした10代を立ち直りやすくする対応が大切だとしています。

生涯持続型青年期限定型
非行が始まる時期幼いころから10代になってから
ダニーデン研究の男子での割合1割未満約4分の1
子どものころの困難子育て・発達・気質に多いほぼ平均的
おもな原因の考え方発達の困難と環境の積み重ね成熟のギャップと仲間
26〜38歳の有罪判決55%30%
モフィットの2つの道すじ(ダニーデン研究の男子の結果をもとに)

あなたの場合は?

10代のころ、「大人扱いしてほしい」と感じて、背伸びした行動をとったことはありますか?

答えを書く必要はありません。少し思い浮かべるだけで、記憶に残りやすくなります。

覚えるのはこの3つ

  1. 10代の非行には、少数の生涯持続型と多数の青年期限定型が混ざっている
  2. 青年期限定型の原因は、体と社会での扱いのずれ(成熟のギャップ)
  3. 生涯持続型も運命ではない。26〜38歳に有罪となったのは約半数

TERMSこのレッスンの用語

生涯持続型Life-course-persistent antisocial behavior

幼いころから問題行動が始まり、10代を過ぎても長く続く少数の人の道すじ。

青年期限定型Adolescence-limited antisocial behavior

10代になってから非行が始まり、大人になるにつれて減っていく多数の人の道すじ。

成熟のギャップMaturity gap

体は大人に近づいているのに、社会では大人の役割や自由が与えられない時期のずれ。

LESSON 7-2 の確認

確認問題(全3問)

本文を見ずに答えてみましょう。思い出そうとすることが、いちばんの復習になります。

Q1. モフィットの理論で、10代の非行をする人の中で数が多いとされるのはどちらでしょう?

答えを見る

正解: 2. 青年期限定型
ダニーデン研究の男子では、青年期限定型が約4分の1、生涯持続型は1割未満でした。10代の非行の多くは、10代だけの一時的なものです。

Q2. 青年期限定型の非行のおもな原因として、モフィットが考えたものはどれでしょう?

答えを見る

正解: 1. 体は大人に近づくのに、社会では子ども扱いされるずれ
ここがポイントです。子どものころの発達や家庭の困難は、生涯持続型の特徴でした。青年期限定型の原因は、成熟のギャップと考えられています。

日常の場面で考える

Q3. ニュースで「子どものころから問題行動があった少年は、大人になっても必ず犯罪を続ける」という意見を見かけました。このレッスンにもとづく考え方として、いちばん適切なものはどれでしょう?

答えを見る

正解: 2. 続きやすい傾向はあるが、必ずではなく、支援で変わりうる
惜しい選択肢もありますが、ここがポイントです。生涯持続型は続きやすい傾向がありました。けれども26〜38歳に有罪となったのは約半数で、「必ず」ではありません。

レッスン7-2はここまでです

迷った問題は、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。間違えた問題は復習ページに自動で入ります。

第7章 発達・ライフコース犯罪学 のレッスン一覧
  1. 7-1年齢犯罪曲線
  2. 7-2青年期限定型と生涯持続型
  3. 7-3犯罪からの離脱

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出典(3件)
  1. Moffitt T. E.「Adolescence-limited and life-course-persistent antisocial behavior: a developmental taxonomy」Psychological Review 100(4), 1993(PubMed)
  2. Moffitt T. E., Caspi A., Harrington H., Milne B. J.「Males on the life-course-persistent and adolescence-limited antisocial pathways: follow-up at age 26 years」Development and Psychopathology 14(1), 2002(PubMed)
  3. Moffitt T. E.「Male antisocial behaviour in adolescence and beyond」Nature Human Behaviour 2, 2018(PubMed Central)