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第2章 古典学派と実証主義 ・ レッスン2-2

ロンブローゾと実証主義。「生まれつきの犯罪者」説はなぜ否定されたのか

約5分 ・ 公開日 2026-10-04

このレッスンの問い

「悪そうな顔の人は、罪を犯しやすい」。この考えを確かめるには、何を調べればよいと思いますか?

読む前に、答えを少しだけ予想してみてください。当たっていなくても大丈夫です。

前のレッスンの復習(1問)

本文に入る前に、前のレッスンを思い出してみましょう。

レッスン2-1から

Q1. 前のレッスンの復習です。罪を犯した本人が、ふたたび罪を犯さないようにする罰の働きを何と呼ぶでしょう?

答えを見る

正解: 1. 特別予防
本人に向けた予防が特別予防、ほかの人に向けた予防が一般予防でした。ベッカリーアは、罰の目的をこの2つの予防だと考えました。

01「生まれつきの犯罪者」説とは

ロンブローゾは、犯罪者の一部は生まれつき体に印を持ち、見た目で見分けられると考えました。

チェーザレ・ロンブローゾ(1835〜1909年)は、イタリアの医師です。1870年12月、盗みで有罪になった男性ヴィッレッラの頭蓋骨を調べ、後頭部の中央にくぼみを見つけました。

彼はこれを、人類の遠い祖先や動物の特徴が現れた「先祖返り」だと考えました。そして1876年の著書『犯罪人論』で、生まれつきの犯罪者がいると唱えます。このような人を生来性犯罪者と呼びます。

今では、このくぼみは人による違いの範囲にすぎず、科学的な根拠はないとされています。ロンブローゾの資料を収めるトリノ大学の博物館も、そう説明しています。

02それでも残った「実証主義」の姿勢

説は誤りでしたが、犯罪の原因を観察とデータで確かめようとした姿勢は、今の犯罪学に受け継がれています。

前のレッスンの古典学派は、罪に見合った罰を考えました。ロンブローゾは罰よりも、犯罪をした人を観察して原因を探ろうとしました。

このように、観察とデータで確かめようとする立場を実証主義と呼びます。『犯罪人論』は生前に5回版を重ね、19世紀の終わりの欧米で広く信じられました。

03ゴーリングの検証

イギリスのゴーリングは受刑者3000人を一般の人々と比べ、「身体的な犯罪者の型」は確かめられないと結論しました。

イギリスでは1902〜1908年に、無作為に選んだ男性受刑者3000人を測定しました。刑務所の医師ゴーリングがこれを分析し、1913年に『イギリスの受刑者』として発表します。

比べた相手は、ケンブリッジやオックスフォードの大学生、病院の患者、兵士などです。このように比べるための集団を対照群と呼びます。年齢や身長などの条件をそろえると、体の違いはほとんど消えました。

ゴーリングは、ロンブローゾの観察は大まかで、思い込みが結果に入りやすいと批判しました。ただし彼自身も、知能の低さを犯罪の主な要因と考えていました。否定した側にも、時代の限界があったのです。

ロンブローゾゴーリング
発表1876年『犯罪人論』1913年『イギリスの受刑者』
調べ方頭蓋骨や体の特徴を大まかに観察3000人を決まった方法で測り、大学生や兵士などと比較
批判された点思い込みが結果に入りやすい知能の低さを主な要因と見た
結論生まれつきの犯罪者がいる身体的な犯罪者の型は確かめられない
ロンブローゾとゴーリングの比べ方の違い

あなたの場合は?

第一印象の見た目だけで、相手の性格を決めつけたことはありますか?そのとき、確かめる方法はあったでしょうか。

答えを書く必要はありません。少し思い浮かべるだけで、記憶に残りやすくなります。

覚えるのはこの3つ

  1. ロンブローゾは1876年、生まれつきの犯罪者は体の特徴で見分けられると唱えた
  2. ゴーリングは1913年、受刑者3000人と対照群を比べ、犯罪者の体の型を否定した
  3. 観察とデータで確かめる実証主義の姿勢は、今の犯罪学に受け継がれている

TERMSこのレッスンの用語

生来性犯罪者Born criminal

生まれつき犯罪をする性質を持ち、体の特徴で見分けられるとされた人。ロンブローゾの説で、現在は否定されている。

先祖返り(アタビズム)Atavism

人類の遠い祖先や動物の特徴が、その人に再び現れること。ロンブローゾは犯罪の原因をこれで説明しようとした。

対照群Control group

調べたい集団と比べるために用意する、条件の近い別の集団。

LESSON 2-2 の確認

確認問題(全3問)

本文を見ずに答えてみましょう。思い出そうとすることが、いちばんの復習になります。

Q1. ロンブローゾの「生来性犯罪者」説の内容として正しいものはどれでしょう?

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正解: 2. 生まれつきの犯罪者がいて、体の特徴で見分けられる
ロンブローゾは、頭蓋骨などに先祖返りの印があり、見た目で犯罪者を見分けられると唱えました。

Q2. ゴーリングの検証で、受刑者と一般の人々の体の違いがほとんど消えたのは、どんなときでしょう?

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正解: 1. 年齢や身長などの条件をそろえて比べたとき
ここがポイントです。年齢や身長などをそろえると、違いはほとんど消えました。条件をそろえて比べることが大切だとわかります。

日常の場面で考える

Q3. 友人が「凶悪事件の犯人の写真を10枚見たら、みんな目つきが鋭かった。犯罪者は顔でわかる」と言いました。この主張に一番足りないものはどれでしょう?

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正解: 2. 罪を犯していない人の写真とも、同じ見方で比べること
惜しい選択肢もありますが、枚数を増やすだけでは足りません。罪を犯していない人と比べる対照群がないと、本当に違いがあるかはわかりません。

レッスン2-2はここまでです

迷った問題は、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。間違えた問題は復習ページに自動で入ります。

第2章 古典学派と実証主義 のレッスン一覧
  1. 2-1ベッカリーアと古典学派
  2. 2-2ロンブローゾと実証主義
  3. 2-3抑止の研究

講座の目次(全14章)へ

出典(4件)
  1. Charles Goring「The English Convict: A Statistical Study」H.M. Stationery Office, 1913(Internet Archive)
  2. Duke University Press「Criminal Man」(Cesare Lombroso著、Mary Gibson・Nicole Hahn Rafter訳)
  3. Museo di Antropologia criminale Cesare Lombroso(トリノ大学)
  4. Museo per la Storia dell'Università di Pavia「Cesare Lombroso」(パヴィア大学)