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第2章 古典学派と実証主義 ・ レッスン2-3

抑止の研究。刑の重さと捕まる確かさ、どちらが効くのか

約5分 ・ 公開日 2026-10-04

このレッスンの問い

罰金を10倍にするのと、見つかる見込みを高めるのと。違反を減らすのはどちらだと思いますか?

読む前に、答えを少しだけ予想してみてください。当たっていなくても大丈夫です。

前のレッスンの復習(1問)

本文に入る前に、前のレッスンを思い出してみましょう。

レッスン2-2から

Q1. 前のレッスンの復習です。ゴーリングがロンブローゾの説の体系を指して呼んだ言葉はどれでしょう?

答えを見る

正解: 1. 犯罪学の迷信
ゴーリングは、思い込みのある観察から集めた「事実」は証拠にならないとして、ロンブローゾの体系を「犯罪学の迷信」と呼びました。

01抑止とは、罰への恐れで思いとどまらせること

抑止とは、罰を恐れる気持ちによって、犯罪を思いとどまらせる働きです。

高速道路で後ろにパトカーがいると気づくと、多くの人は速度を落とします。罰金の額を思い出したからではなく、今は捕まりそうだと感じたからですよね。

このように、罰への恐れで犯罪をやめておく働きを抑止と呼びます。社会全体への脅しで防ぐ効果を一般抑止、罰を受けた本人がくり返さなくなる効果を特別抑止と分けて考えます。

抑止の強さは、昔から3つの要素で考えられてきました。罰を受ける確かさ、罰の重さ、そして罰までの速さです。

02効くのは「捕まる確かさ」

研究の結論は、刑の重さよりも捕まる確かさのほうが、はるかに強く犯罪を抑えるというものです。

米国司法省の研究機関NIJは2016年、抑止の研究を5つの要点にまとめました。その1つめが「捕まる見込みは、きわめて厳しい罰よりもはるかに効く」です。

もとになったのは、米国の犯罪学者ネーギンが2013年に発表したレビューです。ネーギンは、確かさの中でも効いているのは捕まる確かさだと絞り込みました。

警察は、目に見える所にいるだけで犯罪を起こさせない「見張り役」として働きます。NIJは、手錠と無線を持つ警察官の姿のほうが、刑を重くする新しい法律より行動を変えると述べています。

03刑を重くしても効きにくい理由

すでに長い刑をさらに長くしても、抑止の効果はあってもごくわずかです。

理由の1つは、犯罪をする人の多くが、罪ごとの刑の重さをよく知らないことです。知らない罰は、思いとどまる理由になりません。

刑務所に入った経験で、本人がこりるとも限りません。ネーギンらの2009年のレビューは、刑務所以外の罰と比べて、再犯は変わらないか少し増えるとまとめました。

死刑についても、全米科学アカデミーは、殺人を減らすかどうかは研究からはわからないとしています。なお、閉じ込めている間は罪を犯せないという効果は、抑止とは別にあります。

要素意味研究の結論
確かさ罪を犯したら罰を受ける見込み(とくに捕まる見込み)効果の証拠が多く、一貫している
重さ罰のきつさ(刑の長さなど)長い刑をさらに長くしても効果はごくわずか
速さ罪から罰までの時間測りにくく、研究が少ない
抑止の3つの要素と、研究からわかったこと

あなたの場合は?

あなたがつい破ってしまう小さなルールを思い浮かべてください。やめさせるのは、罰の重さと見つかる確かさのどちらでしょう?

答えを書く必要はありません。少し思い浮かべるだけで、記憶に残りやすくなります。

覚えるのはこの3つ

  1. 抑止は、罰への恐れで犯罪を思いとどまらせる働き
  2. 効くのは刑の重さより「捕まる確かさ」
  3. 長い刑をさらに長くしても、抑止の効果はごくわずか

TERMSこのレッスンの用語

抑止Deterrence

罰を恐れる気持ちによって、犯罪を思いとどまらせる働き。

一般抑止General deterrence

罰の脅しによって、社会の人々全体に犯罪を思いとどまらせる効果。

特別抑止Specific deterrence

実際に罰を受けた本人が、その経験によって犯罪をくり返さなくなる効果。

LESSON 2-3 の確認

確認問題(全3問)

本文を見ずに答えてみましょう。思い出そうとすることが、いちばんの復習になります。

Q1. 抑止の研究の結論として、正しいものはどれでしょう?

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正解: 2. 捕まる見込みを高めるほうが、刑を重くするより効く
NIJとネーギンのまとめでは、効くのは刑の重さより捕まる確かさでした。抑止の効果そのものがないわけではありません。

Q2. 刑の重さを中心にした法律が効きにくい理由として、本文で挙げたものはどれでしょう?

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正解: 3. 犯罪をする人の多くが、罪ごとの刑の重さをよく知らないから
ここがポイントです。知らない罰は、思いとどまる理由になりません。だから重さだけを上げても効きにくいのです。

日常の場面で考える

Q3. 職場で、備品の無断持ち帰りを減らしたいとします。抑止の研究から見て、いちばん効きそうなのはどれでしょう?

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正解: 2. 持ち出しを毎日確認し、確認していることを全員に知らせる
惜しい選択肢もありますが、効くのは「見つかる」と感じさせることです。罰を重く書くだけでは、見つかる見込みは変わりません。

レッスン2-3はここまでです

迷った問題は、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。間違えた問題は復習ページに自動で入ります。

第2章 古典学派と実証主義 のレッスン一覧
  1. 2-1ベッカリーアと古典学派
  2. 2-2ロンブローゾと実証主義
  3. 2-3抑止の研究

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出典(3件)
  1. National Institute of Justice「Five Things About Deterrence」(米国司法省、2016年)
  2. National Institute of Justice「Five Things About Deterrence」PDF版と補足(NCJ 247350、2016年)
  3. Daniel S. Nagin「Deterrence」Reforming Criminal Justice, Vol. 4(Academy for Justice, アリゾナ州立大学, 2017)