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第5章 社会学の理論(2)絆とレッテル ・ レッスン5-2

自己統制はどう育つのか。子育てと「見守り」の役割

約5分 ・ 公開日 2026-10-04

このレッスンの問い

子どもの毎日の様子をよく知っている親。それは、親がしっかり見張っているからだと思いますか?

読む前に、答えを少しだけ予想してみてください。当たっていなくても大丈夫です。

前のレッスンの復習(1問)

本文に入る前に、前のレッスンを思い出してみましょう。

レッスン5-1から

Q1. 前のレッスンの復習です。ハーシが1964年の調査で確かめた4つの絆のうち、予想どおりの結果が出なかったものはどれでしょう?

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正解: 2. 巻き込み
スポーツや趣味などに使う時間(巻き込み)は、非行と関係がありませんでした。非行の多くは短い時間でできてしまうためです。

01理論の主張は「見守る・気づく・正す」

ゴットフレッドソンとハーシは、自己統制は子どものころのしつけで育ち、そのための条件は3つあると考えました。

1990年、ゴットフレッドソンとハーシは『犯罪の一般理論』を出版しました。人は自己統制を持たずに生まれ、おもに親のしつけを通して身につけるという考えです。

しつけが働く条件として、2人は3つを挙げました。子どもの行動を見守ること、よくない行動が起きたときに気づくこと、そしてそれを正すことです。

さらに、自己統制の高さは8〜10歳ごろまでにほぼ決まり、その後は変わりにくいと考えました。この「変わりにくい」という部分は、のちに批判を受けます。

02ハーシは「絆」から「自己統制」へ

ハーシは絆の理論から自己統制の理論へ移り、2004年には2つを「同じもの」と言い直しました。

ハーシは1969年に、社会とのつながりが人を犯罪から遠ざけるという社会的絆理論を発表した人です。絆は、愛着・投資・没頭・信念の4つから成るとされました。

1990年の理論では、犯罪の原因を、子どものころに育つ本人の力に移しました。ところが2004年、ハーシは「社会的統制と自己統制は同じもの」と述べます。

自己統制を、どこへ行っても持ち歩くブレーキの束と定義し直したのです。そのブレーキの中身は、親への愛着など、絆の4つの要素で説明できるとしました。

03見守りの研究と、理論への批判

親が子どもの様子を知っていることは大切ですが、その知識の多くは、見張りよりも子どもが自分から話すことで得られていました。

2000年、カーとスタティンは、スウェーデン中部の14歳1186人とその親を調べました。親が子どもの行動をよく知っている家庭ほど、子どもの適応はよい傾向でした。

ただ、その関係をより強く説明したのは、親の見張りではなく子どもが自分から話すことでした。子どもが「管理されている」と感じる気持ちは、むしろ悪い適応と結びついていました。

たとえば、帰宅した子どもを質問ぜめにするより、子どもが自然に話せる雰囲気のほうが、親は多くを知れるのかもしれません。見守りは、見張りよりも関係づくりに近いのです。

72本の論文をまとめた2020年の分析では、よいしつけは自己統制の高さと結びついていましたが、その効果は小さいものでした。子育てだけで自己統制が決まるわけではありません。

条件中身のちの研究から
見守る子どもの行動に目を配る親の知識は、見張りより子どもが自分から話すことで得られていた
気づくよくない行動が起きたらそれと気づく親が行動をよく知っている家庭ほど、子どもの適応はよい傾向だった
正すよくない行動を正し、だめだと伝えるよいしつけの効果は確かにあるが、大きさは小さかった
犯罪の一般理論が挙げた、しつけの3つの条件と、のちの研究でわかったこと

あなたの場合は?

あなたが子どものころ、親や先生に自分から話したくなったのは、どんな相手でしたか?

答えを書く必要はありません。少し思い浮かべるだけで、記憶に残りやすくなります。

覚えるのはこの3つ

  1. 犯罪の一般理論:自己統制はしつけで育つ。条件は見守る・気づく・正すの3つ
  2. ハーシは絆の理論から自己統制の理論へ。2004年に「2つは同じもの」と言い直した
  3. 親の知識は見張りより子どもが自分から話すことで得られ、子育ての効果は小さい

TERMSこのレッスンの用語

犯罪の一般理論A General Theory of Crime

ゴットフレッドソンとハーシが1990年に示した、自己統制の低さを犯罪の中心的な原因とみる理論。

親の見守りParental monitoring

子どもがどこで誰と何をしているかに、親が目を配り把握すること。

子どもの自己開示Child disclosure

子どもが自分のしたことや気持ちを、たずねられなくても自分から親に話すこと。

LESSON 5-2 の確認

確認問題(全3問)

本文を見ずに答えてみましょう。思い出そうとすることが、いちばんの復習になります。

Q1. ゴットフレッドソンとハーシが、自己統制を育てるしつけの条件として挙げたものはどれでしょう?

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正解: 1. 見守る・気づく・正す
子どもの行動を見守り、よくない行動に気づき、それを正す。この3つがそろうと自己統制が育つと考えました。

Q2. 2004年のハーシの考えとして正しいものはどれでしょう?

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正解: 2. 社会的統制と自己統制は同じものである
ハーシは自己統制を「どこへ行っても持ち歩くブレーキの束」と言い直し、その中身を絆の4つの要素で説明できるとしました。

日常の場面で考える

Q3. 中学生の子をもつ親が「毎日スマホの位置を確かめ、行き先を細かく問いただせば安心だ」と考えています。このレッスンの研究から言えることとして、いちばん適切なものはどれでしょう?

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正解: 2. 親が子どもの様子を知る大きな手がかりは、子どもが自分から話すことだった
惜しい考え方もありますが、ここがポイントです。親が様子を知っていることは大切です。ただ研究では、その知識は見張りより子どもが自分から話すことで得られ、管理されていると感じる気持ちは悪い適応と結びついていました。

レッスン5-2はここまでです

迷った問題は、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。間違えた問題は復習ページに自動で入ります。

第5章 社会学の理論(2)絆とレッテル のレッスン一覧
  1. 5-1社会的絆理論
  2. 5-2子育てと自己統制
  3. 5-3ラベリング理論

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出典(6件)
  1. Kwan M. P.「Gambling disorder gender analysis: social strain, gender norms, and self-control as risk factors」Frontiers in Sociology, 2024(『犯罪の一般理論』p.97 のしつけの条件と、8〜10歳で決まるとする主張の引用。PubMed Central)
  2. Hoeve M. ほか「Trajectories of delinquency and parenting styles」Journal of Abnormal Child Psychology, 2008(一般理論のしつけの3条件の要約。PubMed Central)
  3. Saladino V. ほか「Family religiosity and climate」Frontiers in Psychology, 2024(ハーシ1969年の絆の4要素と、2004年の自己統制の再定義の引用。PubMed Central)
  4. Kerr M., Stattin H.「What parents know, how they know it, and several forms of adolescent adjustment」Developmental Psychology 36(3), 2000(PubMed)
  5. Tehrani H. D., Yamini S.「Dataset of parenting practices, self-control and anti-social behaviors: Meta-analytic structural equation modeling」Data in Brief, 2020(72本・255の効果量のメタ分析。PubMed Central)
  6. Ray J. V., Jones S.「Aging Out of Crime and Personality Development」Psychology Research and Behavior Management, 2023(人は自己統制を持たずに生まれ、しつけで身につけるという一般理論の要約。PubMed Central)