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第5章 社会学の理論(2)絆とレッテル ・ レッスン5-3

ラベリング理論。レッテルが人を変える

約5分 ・ 公開日 2026-10-04

このレッスンの問い

一度の万引きで「泥棒」と呼ばれ続けた子どもは、その後どうなると思いますか?

読む前に、答えを少しだけ予想してみてください。当たっていなくても大丈夫です。

前のレッスンの復習(1問)

本文に入る前に、前のレッスンを思い出してみましょう。

レッスン5-2から

Q1. 前のレッスンの復習です。カーとスタティンの研究で、親が子どもの様子を知っていることを、いちばんよく説明していたのはどれでしょう?

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正解: 2. 子どもが自分から親に話すこと
親の見張りよりも、子どもが自分から話すことのほうが強く関係していました。見守りの土台は、子どもとの関係づくりでした。

01逸脱は周りの反応から生まれる

ラベリング理論は、周りが貼るレッテルが、その人をさらに逸脱へ向かわせることがあると考えます。

これまでの理論は「なぜ人は罪を犯すのか」を問いました。ラベリング理論は問いを変え、「誰が、誰に『犯罪者』の札を貼るのか」に目を向けます。

1963年、アメリカの社会学者ハワード・ベッカーは『アウトサイダーズ』を出しました。逸脱は行為そのものの性質ではなく、周りが規則と制裁を当てはめた結果だと論じたのです。

ベッカーの言葉では、逸脱者とは、そのレッテルがうまく貼られた人のことです。同じことをしても、見つかって札を貼られる人と、そうでない人がいます。

02一次的逸脱と二次的逸脱

レマートは、レッテルを貼られる前の逸脱と、貼られた後に生まれる逸脱を分けて考えました。

エドウィン・レマートは1951年の『社会病理学』で、逸脱を2つに分けました。最初の小さな規則やぶりを一次的逸脱と呼びます。若い時期にはよくある行いです。

問題はその後です。「非行少年」というレッテルが定着すると、周りの見る目が変わり、学校や仕事の機会も狭まります。こうして続いていく逸脱を二次的逸脱と呼びます。

たとえば中学生が一度万引きをして、学校中に「泥棒」と知れ渡ったとします。友だちの親は付き合いを止め、受け入れてくれるのは同じく札を貼られた仲間だけになります。やがて本人も「どうせ自分はそういう人間だ」と思い始めます。

03正式な処分は非行を減らすのか

少年を正式な手続きに乗せると、その後の非行はむしろ増える方向だったという研究のまとめがあります。

アメリカのペトロシーノらは2010年、キャンベル共同計画の系統的レビューでこの問いを調べました。軽い非行の少年を、正式な手続きに乗せる群と乗せない群に無作為に分けた実験を集めたものです。

対象は1973〜2008年に報告された29の実験、少年7,304人です。正式な手続きに非行を減らす効果は見られず、どの測り方でもむしろ非行を増やす方向でした。

差が特に大きかったのは、手続きに乗せず支援プログラムに回す方法と比べたときです。ただし、ラベリング理論の検証結果はまちまちです。処分がどんな道筋で非行を増やすのかは、まだはっきりしていません。

段階起きること例
一次的逸脱最初の小さな規則やぶり一度だけの万引き
レッテル周りや公的機関が札を貼る「泥棒」と知れ渡る
周りの反応付き合いや機会が減る友だちの親が付き合いを止める
自己像の変化自分を札どおりの人間と見る「どうせ自分は」と思う
二次的逸脱レッテルの後に続く逸脱札を貼られた仲間と非行を重ねる
レッテルが逸脱を強めていく流れ(レマートの区別をもとに作成)

あなたの場合は?

あなたが誰かに貼っている「あの人は〇〇な人だ」というレッテルはありますか?それが相手の行動を変えていないか、考えてみましょう。

答えを書く必要はありません。少し思い浮かべるだけで、記憶に残りやすくなります。

覚えるのはこの3つ

  1. ラベリング理論は、周りが貼るレッテルが人をさらに逸脱へ向かわせると考える
  2. レマートの区別。最初の規則やぶりが一次的逸脱、レッテルの後に続くのが二次的逸脱
  3. 少年を正式な手続きに乗せると、その後の非行はむしろ増える方向だった(29の実験のまとめ)

TERMSこのレッスンの用語

ラベリング理論Labeling theory

周りから貼られる「犯罪者」「非行少年」などのレッテルが、その人をさらに逸脱へ向かわせることがあると考える理論。

二次的逸脱Secondary deviance

レッテルを貼られた後、周りの反応を受けて続いていく逸脱。レマートの用語。

ダイバージョンDiversion

罪を犯した少年などを正式な手続きに乗せず、注意や支援プログラムなど別の対応に回すこと。

LESSON 5-3 の確認

確認問題(全3問)

本文を見ずに答えてみましょう。思い出そうとすることが、いちばんの復習になります。

Q1. ベッカーの考え方として正しいものはどれでしょう?

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正解: 2. 逸脱は、周りが規則を当てはめてレッテルを貼った結果である
ベッカーは、逸脱は行為の性質ではなく、周りが規則と制裁を当てはめた結果だと考えました。体の特徴で決まるという説は、第2章のロンブローゾの考え方です。

Q2. レマートのいう二次的逸脱にあたるものはどれでしょう?

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正解: 3. レッテルを貼られた後、周りの反応を受けて続いていく逸脱
最初の規則やぶりは一次的逸脱です。レッテルが定着し、周りの扱いが変わった後に続く逸脱が、二次的逸脱にあたります。

日常の場面で考える

Q3. 一度大きなミスをした新人が「ミスの多い人」と呼ばれ、大事な仕事を任されなくなりました。その後ミスが増えたとき、ラベリング理論から考えられることはどれでしょう?

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正解: 2. レッテルと周りの扱いの変化が、本人の行動や自信に影響した可能性がある
惜しい選択肢もありますが、ここがポイントです。ラベリング理論は、貼られた札と周りの扱いの変化が、本人の見方や行動を変えうると考えます。犯罪に限らず、日常でも起きうる流れです。

レッスン5-3はここまでです

迷った問題は、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。間違えた問題は復習ページに自動で入ります。

第5章 社会学の理論(2)絆とレッテル のレッスン一覧
  1. 5-1社会的絆理論
  2. 5-2子育てと自己統制
  3. 5-3ラベリング理論

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出典(4件)
  1. Petrosino A., Turpin-Petrosino C., Guckenburg S.「Formal System Processing of Juveniles: Effects on Delinquency」Campbell Systematic Reviews 6(1), 2010(要旨・IDEAS/RePEc)
  2. WestEd「In Crime Prevention, What Is Best for Young People?」(上記レビューの著者所属機関による紹介)
  3. Restivo E., Lanier M. M.「Measuring the Contextual Effects and Mitigating Factors of Labeling Theory」Justice Quarterly 32(1), 2015(フロリダ州立大学)
  4. Gillespie W.「Labeling Theory」Encyclopedia of Law & Society, SAGE, 2007