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第10章 日本の刑事司法の流れ ・ レッスン10-2起訴と不起訴。すべての事件が裁判になるわけではない
約5分 ・ 公開日 2026-10-04
このレッスンの問い
警察に捕まった人は、みんな刑事裁判を受けると思いますか?
読む前に、答えを少しだけ予想してみてください。当たっていなくても大丈夫です。
前のレッスンの復習(1問)
本文に入る前に、前のレッスンを思い出してみましょう。
Q1. 前のレッスンの復習です。警察が逮捕した人を検察官に送る手続きは、身体を拘束した時から何時間以内と決められていたでしょう?
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正解: 2. 48時間以内
警察は48時間以内に送致の手続きをします。24時間は検察官が勾留を請求するまで、72時間は拘束からの合計の上限でした。
01裁判にかけるかは検察官が決める
事件を裁判にかけるかどうかは検察官が決め、疑いが十分でも起訴しないことがあります。
警察が調べた事件の多くは、検察官に送られます。刑事訴訟法247条は、裁判を求める起訴(公訴)は検察官が行うと定めています。
さらに248条は、犯人の性格・年齢・境遇、罪の重さや情状、犯罪後の様子から必要がなければ、起訴しないことができると定めます。起訴するかどうかを検察官の判断に任せるこの考え方を、起訴便宜主義と呼びます。
たとえば、初めて万引きをした大人が、店に弁償して深く反省しているとします。罪を犯した疑いは十分でも、検察官が裁判までは必要ないと判断すれば、起訴されないことがあります。
02不起訴の理由と、法廷を開かない略式手続
不起訴の理由でいちばん多いのは起訴猶予で、起訴にも法廷を開く方法と開かない方法があります。
起訴しない処分を不起訴といい、理由はいくつかあります。罪にならない、疑いがないか不十分(嫌疑不十分)、告訴の取消し、時効などです。そして、疑いは十分でも起訴しないのが起訴猶予です。
令和6年に不起訴となった15万6,264人(過失運転致死傷等と道路交通法違反を除く)では、起訴猶予が68.2%、嫌疑不十分が24.4%でした。
起訴にも2つの方法があります。法廷で裁判を開くよう求める公判請求と、簡易裁判所が書面だけで100万円以下の罰金や科料を命じる略式命令の請求です(461条)。略式手続は、本人が異議がないと書面で示した場合に限られます。
03数字で見る起訴、そして検察審査会
令和6年の起訴率は32.6%で、不起訴に納得できない人は検察審査会に申し立てられます。
令和7年版犯罪白書によると、令和6年に検察庁が処理したのは78万2,735人でした。起訴率(起訴と不起訴を合わせた中で起訴の割合)は32.6%です。起訴猶予率(起訴と起訴猶予を合わせた中で起訴猶予の割合)は64.2%でした。
不起訴に納得できない被害者などは、検察審査会に審査を申し立てられます。くじで選ばれた11人の市民が、不起訴がよかったかどうかを審査します。検察審査会は全国に165か所あります。
11人中8人以上が「起訴相当」とすると、検察官は起訴するかを考え直します。それでも不起訴なら再び審査し、8人以上で起訴議決をすると、裁判所が指定した弁護士が起訴します。
| 処理 | 意味 | 人数 | 割合 |
|---|---|---|---|
| 公判請求 | 起訴して、法廷で裁判を開く | 8万287人 | 10.3% |
| 略式命令請求 | 起訴して、書面で罰金などを命じる | 15万8,783人 | 20.3% |
| 起訴猶予 | 疑いは十分だが、起訴しない | 42万9,432人 | 54.9% |
| その他の不起訴 | 嫌疑不十分・罪にならないなど | 6万4,586人 | 8.3% |
| 家庭裁判所送致 | 少年の事件を家庭裁判所へ送る | 4万9,647人 | 6.3% |
あなたの場合は?
あなたが検察官なら、初めて万引きをして弁償も済ませた人を裁判にかけますか?何を手がかりに決めますか?
答えを書く必要はありません。少し思い浮かべるだけで、記憶に残りやすくなります。
覚えるのはこの3つ
- 起訴するかは検察官が決める。疑いが十分でも起訴しない起訴猶予がある(起訴便宜主義・刑事訴訟法248条)
- 令和6年の起訴率は32.6%、起訴猶予率は64.2%。不起訴の理由でいちばん多いのは起訴猶予
- 不起訴に納得できなければ検察審査会へ。11人の市民が審査し、2度目に8人以上なら起訴議決
TERMSこのレッスンの用語
起訴するかどうかを、事件の事情に応じて検察官の判断に任せる考え方。日本では刑事訴訟法248条に定めがある。
罪を犯した疑いは十分にあるが、犯人の境遇や罪の重さ、犯罪後の様子などから、検察官が起訴しないこと。不起訴の理由の一つ。
くじで選ばれた11人の市民が、検察官の不起訴処分がよかったかどうかを審査する機関。
LESSON 10-2 の確認
確認問題(全3問)
本文を見ずに答えてみましょう。思い出そうとすることが、いちばんの復習になります。
Q1. 刑事訴訟法248条によると、検察官が起訴しないことができるのはどんなときでしょう?
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正解: 1. 犯人の性格・境遇や罪の重さ、犯罪後の様子などから、起訴の必要がないとき
248条は、性格・年齢・境遇、罪の重さや情状、犯罪後の様子から必要がなければ起訴しないことができると定めます。逮捕の有無は条件ではありません。
Q2. 令和6年に不起訴となった人(過失運転致死傷等と道路交通法違反を除く)で、理由として最も多かったものはどれでしょう?
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正解: 2. 起訴猶予
惜しい選択肢もありますが、ここがポイントです。起訴猶予が68.2%で最も多く、嫌疑不十分は24.4%でした。
Q3. 「〇〇氏は不起訴処分となった」というニュースを見た友人が「じゃあ無実だったんだね」と言いました。このレッスンから言えることはどれでしょう?
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正解: 3. 不起訴には、疑いは十分でも起訴しない起訴猶予も含まれ、無実とは限らない
不起訴には嫌疑不十分のほか、疑いが十分でも起訴しない起訴猶予もあります。不起訴は裁判で無実を証明するものではなく、検察審査会が審査することもあります。