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第10章 日本の刑事司法の流れ ・ レッスン10-3

刑事裁判と裁判員制度。なぜ日本の有罪率は高いのか

約5分 ・ 公開日 2026-10-04

このレッスンの問い

日本の刑事裁判で無罪になる人は、1,000人のうち何人くらいだと思いますか?

読む前に、答えを少しだけ予想してみてください。当たっていなくても大丈夫です。

前のレッスンの復習(1問)

本文に入る前に、前のレッスンを思い出してみましょう。

レッスン10-2から

Q1. 前のレッスンの復習です。検察審査会が「起訴相当」の議決をするには、11人の検察審査員のうち何人以上の賛成が必要でしょう?

答えを見る

正解: 1. 8人以上
起訴相当の議決には8人以上が必要です。検察官が再び不起訴にしても、2度目の審査で8人以上が起訴議決をすると、裁判所が指定した弁護士が起訴します。

01刑事裁判は4つの段階で進む

刑事裁判は、冒頭手続、証拠調べ、論告と弁論、判決の順に進みます。

ニュースで「被告人」と呼ばれる人は、検察官に起訴され、裁判にかけられた人です。裁判の最初に、裁判官は本人に間違いないかを確かめ、検察官が起訴状を読み上げます。裁判官は、言いたくないことは言わなくてよい黙秘権があることも説明します。

次の証拠調べでは、まず検察官が証拠の取り調べを求め、証人に質問します。最後に検察官が事実や刑についての意見を述べ(論告)、弁護人も意見を述べます(弁論)。そのうえで、裁判所が判決を言い渡します。

02疑わしいときは無罪。それでも有罪が多い理由

罪を犯したと確信できなければ無罪です。それでも無罪が少ないのは、起訴の段階で事件が絞り込まれているからです。

有罪と確かめられるまでは、罪を犯していない人として扱う。この考え方を無罪推定と呼びます。罪を証明する責任は検察官にあり、常識的に見て間違いないと言えるまで証明できなければ無罪です。

刑事訴訟法336条も、犯罪の証明がないときは無罪を言い渡すよう定めています。「疑わしきは被告人の利益に」という言葉は、この原則を表しています。

犯罪白書(令和7年版)によると、2024年に通常の第一審を終えた4万8,388人のうち、無罪は92人で約0.2%でした。

これは、裁判が形だけだからとは限りません。検察官は、証拠が足りない事件を「嫌疑不十分」として起訴しないからです。裁判に来る時点で、罪を証明できる見込みの高い事件に絞られているのです。

03裁判員制度。市民が裁判官と一緒に決める

裁判員制度は、市民から選ばれた裁判員6人が、裁判官3人と一緒に重大な事件の有罪・無罪と刑を決める制度です。

裁判員制度は2009年5月21日に始まりました。対象は、死刑や無期拘禁刑がありうる罪や、故意の犯罪行為で人を死なせた罪の事件です。殺人、強盗致死傷、傷害致死、現住建造物等放火などが当たります。

裁判員と裁判官は、原則6人と3人です。結論は多数決で決めますが、有罪とするには裁判官1人以上の賛成が必要です。2024年に、裁判員裁判の対象事件で第一審の判決を受けた人は848人でした。

裁判員は、衆議院議員の選挙権がある人から選ばれます。2022年4月に対象年齢が20歳以上から18歳以上に引き下げられ、2023年からは18・19歳も実際に選ばれています。

段階何をするか主に動く人
冒頭手続本人の確認、起訴状の朗読、黙秘権の説明裁判官・検察官
証拠調べ証拠を調べ、証人や被告人に質問する検察官・弁護人
論告と弁論事実や刑について最後の意見を述べる検察官・弁護人
判決有罪か無罪か、有罪なら刑を言い渡す裁判官(裁判員裁判では裁判員も)
刑事裁判の流れと、主に動く人

あなたの場合は?

ニュースで「被告人」と聞いたとき、あなたはその人をもう犯人だと決めつけていませんか?

答えを書く必要はありません。少し思い浮かべるだけで、記憶に残りやすくなります。

覚えるのはこの3つ

  1. 刑事裁判は、冒頭手続、証拠調べ、論告と弁論、判決の順に進む
  2. 罪の証明は検察官の責任。証明できなければ無罪(無罪推定)。無罪が少ないのは起訴で絞られているから
  3. 裁判員制度は2009年開始。裁判員6人と裁判官3人で、重大事件の有罪・無罪と刑を決める

TERMSこのレッスンの用語

無罪推定Presumption of innocence

有罪と確かめられるまでは、罪を犯していない人として扱うという刑事裁判の原則。

立証責任Burden of proof

事実を証明する責任。刑事裁判では、罪を犯したことの証明は検察官が負う。

論告Prosecutor's closing argument

証拠調べのあと、検察官が事実や法律、刑についての意見を述べること。

LESSON 10-3 の確認

確認問題(全3問)

本文を見ずに答えてみましょう。思い出そうとすることが、いちばんの復習になります。

Q1. 刑事裁判で、被告人が罪を犯したことを証明する責任を負うのはだれでしょう?

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正解: 2. 検察官
証明する責任は検察官にあります。被告人が自分の無実を証明する必要はなく、検察官が証明できなければ無罪になります。

Q2. 裁判員裁判で、原則として事件を担当するのはどの組み合わせでしょう?

答えを見る

正解: 1. 裁判員6人と裁判官3人
原則は裁判員6人と裁判官3人です。多数決で決めますが、有罪にするには裁判官1人以上の賛成が必要です。

日常の場面で考える

Q3. 友人が「無罪が約0.2%しかないのは、裁判がただの形式だからだ」と言いました。この数字を読むとき、まず押さえておきたい点はどれでしょう?

答えを見る

正解: 1. 証拠が足りない事件は、起訴の段階で除かれていること
ここがポイントです。証拠が足りない事件は嫌疑不十分として起訴されません。裁判に来る事件がすでに絞られているので、数字だけで裁判の中身は判断できません。

レッスン10-3はここまでです

迷った問題は、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。間違えた問題は復習ページに自動で入ります。

第10章 日本の刑事司法の流れ のレッスン一覧
  1. 10-1捜査と検挙
  2. 10-2起訴と不起訴
  3. 10-3刑事裁判と裁判員制度

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出典(11件)
  1. 裁判所「刑事事件」(刑事裁判手続の流れ)
  2. 裁判所「刑事事件Q&A」(立証責任・黙秘権)
  3. 裁判所 裁判員制度「裁判員制度の概要」
  4. 裁判所 裁判員制度「Q&A」(人数・評決)
  5. 法務省「検察庁と刑事手続の流れ」(嫌疑不十分・起訴猶予)
  6. 法務省「裁判員制度の概要」(18歳・19歳の選任)
  7. 岡山地方裁判所「裁判員制度に関する広報」(18歳以上への引き下げ)
  8. 法務省『令和7年版 犯罪白書』2-3-3-1表 通常第一審における終局処理人員
  9. 法務省『令和7年版 犯罪白書』第2編第3章第3節3 裁判員裁判
  10. e-Gov法令検索「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」(2条・13条・67条)
  11. e-Gov法令検索「刑事訴訟法」(336条)