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第8章 被害者学 ・ レッスン8-2

繰り返される被害。一度被害に遭うとなぜまた狙われやすいのか

約5分 ・ 公開日 2026-10-04

このレッスンの問い

「同じ所に雷は二度落ちない」と言います。空き巣に入られた家は、もう安全だと思いますか?

読む前に、答えを少しだけ予想してみてください。当たっていなくても大丈夫です。

前のレッスンの復習(1問)

本文に入る前に、前のレッスンを思い出してみましょう。

レッスン8-1から

Q1. 前のレッスンの復習です。被害者を「責任がない」から「責任がある」まで段階に分ける初期の考え方が、批判されてきたおもな理由はどれでしょう?

答えを見る

正解: 1. 被害者を責める見方につながるから
被害者の責任の重さを測ろうとする見方は、被害者非難につながると批判されました。犯罪の責任は、罪を犯した側にあります。

被害に遭ったときの相談先

この講座は学習用で、個別の相談の代わりにはなりません。被害に遭ったときは、一人で抱え込まずに公的な相談窓口を利用できます。いま危険が迫っているときは110番に通報してください。

出典: 警察庁「支援一覧」、法テラス「お電話でのお問合せ(法テラス・サポートダイヤル)」

01被害は同じ家に繰り返し起きる

一度被害に遭った家や人は、まだ遭っていない家や人より、また被害に遭いやすいことがわかっています。

同じ人や場所が、短い期間に何度も犯罪の被害に遭うこと。これを反復被害と呼びます。被害に遭った人に落ち度があるという意味ではありません。

イギリス北西部ロッチデールのカークホルト団地は、約2,280戸の公営住宅です。1985年には、およそ25%の住宅が空き巣などの侵入盗に遭っていました。

1986年の分析では、一度入られた家がもう一度入られる確率は、偶然から予想される値の4倍を超えていました。12月に被害に遭った世帯の半数近くは、同じ年にすでに一度入られていました。

02危ないのは最初の被害の直後

繰り返しの被害は最初の被害のすぐあとに集中し、時間がたつと急に減ります。

カナダのサスカトゥーンで空き巣を調べた研究(ポルヴィら、1991年)があります。1か月以内の2回目の被害は、予想の12倍を超えていました。6か月あけた場合は、予想の2倍未満まで下がりました。

しかも1か月以内の2回目のうち、半数は最初の被害から7日以内に起きていました。ファレルとピースは1993年の報告書「一度噛まれると、二度噛まれる」で、学校の被害などにも同じ傾向を示しました。

例えば、自転車を盗まれて新しく買い、同じ場所に止めたらまた盗まれた。こうした話も、運が悪かっただけとは限らないのです。

03目印と後押し。2つの説明

また狙われる理由は、場所がもともと狙われやすい「目印」と、最初の犯行が次を呼ぶ「後押し」の2つで説明されます。

目印の説明では、立地や造りなどの条件がそろった場所が、別々の犯人に何度も選ばれると考えます。後押しの説明では、一度入った犯人が家の中や逃げ道を知り、また戻ってくると考えます。

ファレルとピースは、危険が被害の直後に急に高まる点は、目印だけでは説明しにくいとしました。オランダの研究では、有罪になった空き巣の約30%が、同じ家に戻ったことを認めています。

どちらの説明でも、選んでいるのは犯人です。カークホルトでは被害に遭った家を優先して、鍵や窓の強化、近所どうしの小さな見守りなどを組み合わせました。空き巣は3年後に約4分の1(526件から132件)まで減りました。

目印(フラッグ)後押し(ブースト)
何が起きているかもともと狙われやすい条件がある最初の犯行が、次の犯行を呼ぶ
くり返すのは別々の犯人同じ犯人(または話を聞いた仲間)
例人目につきにくい立地の家一度入って中の様子を知った家
対策のヒント狙われやすい条件そのものを変える被害の直後に、すぐ守りを固める
反復被害の2つの説明(ファレルとピース、問題指向型警察活動センターの解説をもとに作成)

あなたの場合は?

あなたや家族が何かの被害に遭ったとしたら、その後の数週間に、まず見直せる場所や習慣はどこでしょう?

答えを書く必要はありません。少し思い浮かべるだけで、記憶に残りやすくなります。

覚えるのはこの3つ

  1. 一度被害に遭った人や場所は、また狙われやすい(反復被害)。被害者の落ち度ではない
  2. 危険がいちばん高いのは被害の直後。時間がたつと急に下がる
  3. 理由は「目印」と「後押し」。被害に遭った家を優先して守ると、空き巣が大きく減った(カークホルト)

TERMSこのレッスンの用語

反復被害Repeat victimization

同じ人や場所が、短い期間のうちに再び犯罪の被害に遭うこと。

目印(フラッグ)の説明Flag account

もともと狙われやすい条件をもつ人や場所が、別々の犯人に繰り返し選ばれるという説明。

後押し(ブースト)の説明Boost account

最初の犯行で得た知識や成功が、同じ犯人などによる次の犯行を呼ぶという説明。

LESSON 8-2 の確認

確認問題(全3問)

本文を見ずに答えてみましょう。思い出そうとすることが、いちばんの復習になります。

Q1. カークホルト団地の1986年の分析でわかったことはどれでしょう?

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正解: 2. 一度入られた家がまた入られる確率は、予想の4倍を超えていた
偶然だけなら予想される値と比べて、2回目の被害は4倍を超えていました。12月の被害世帯の半数近くが、同じ年に一度入られていました。

Q2. 繰り返しの被害が最も起きやすいのはいつでしょう?

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正解: 1. 最初の被害のすぐあと
ここがポイントです。サスカトゥーンの研究では、1か月以内の2回目は予想の12倍を超え、その半数は7日以内でした。時間がたつと危険は急に下がります。

日常の場面で考える

Q3. 近所の家が空き巣に入られました。このレッスンの研究にいちばん合う考え方はどれでしょう?

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正解: 3. 被害の直後の数週間こそ、鍵や窓を早めに直し、周りでも見守る
惜しい答えを選んだ人も、ここで確かめましょう。危険は被害の直後がいちばん高く、選んでいるのは犯人です。だからこそ直後に守りを固めることが役立ちます。

レッスン8-2はここまでです

迷った問題は、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。間違えた問題は復習ページに自動で入ります。

第8章 被害者学 のレッスン一覧
  1. 8-1被害者学とは
  2. 8-2反復被害
  3. 8-3日本の被害者支援

講座の目次(全14章)へ

出典(3件)
  1. Farrell G., Pease K.「Once Bitten, Twice Bitten: Repeat Victimisation and its Implications for Crime Prevention」Crime Prevention Unit Paper 46, Home Office, 1993(問題指向型警察活動センター所蔵)
  2. Forrester D., Chatterton M., Pease K.「The Kirkholt Burglary Prevention Project, Rochdale」Crime Prevention Unit Paper 13(1988)、同 Phase II, Paper 23(1990), Home Office(問題指向型警察活動センター所蔵)
  3. Center for Problem-Oriented Policing「Crime Analysis for Problem Solvers in 60 Small Steps」Step 29: Be ready for repeat victimization