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第3章 生物学と心理学からの説明 ・ レッスン3-2

衝動性と自己統制。性格は犯罪とどう関係するのか

約5分 ・ 公開日 2026-10-04

このレッスンの問い

「がまんが苦手な子どもは、大人になって犯罪をしやすい」。これは本当だと思いますか?

読む前に、答えを少しだけ予想してみてください。当たっていなくても大丈夫です。

前のレッスンの復習(1問)

本文に入る前に、前のレッスンを思い出してみましょう。

レッスン3-1から

Q1. 前のレッスンの復習です。カスピらの2002年の研究でわかったことはどれでしょう?

答えを見る

正解: 2. 虐待を受けた男性では、MAOAの働きが弱い型の人のほうが反社会的な行動が目立った
型だけでは差は見られず、虐待の経験と組み合わさったときに差が出ました。これが遺伝と環境の相互作用です。

01自己統制とは、目先の欲求をおさえる力

自己統制とは、目先の欲求や衝動をおさえ、先の結果を考えて行動する力です。

テストの前日なのに、つい動画を見続けてしまう。欲しい物を見ると、考える前に買ってしまう。こうした「考える前に動く」傾向を、衝動性と呼びます。

反対に、行動や感情、注意の向け先をおさえて、長い目で見た目標に向かう力を自己統制(セルフコントロール)と呼びます。同じ年齢の人どうしでも、この力には個人差があります。

1990年、ゴットフレッドソンとハーシは、自己統制を犯罪の中心的な原因とする理論を発表しました。この理論は第5章でくわしく学びます。ここでは、データで何がわかったかを見ていきましょう。

02約1000人を32歳まで追ったダニーデン研究

子どものころの自己統制が低かった人ほど、32歳までに有罪判決を受けた割合が高くなっていました。

ニュージーランドのダニーデン市で1972〜73年に生まれた1037人を、誕生から追い続けている縦断研究があります。ダニーデン研究と呼ばれています。

研究チームは、3歳から11歳までの間に、観察者・親・教師・本人の評価を集めて子どもの自己統制を測りました。2011年、モフィットらは、それを32歳までの暮らしと比べた結果を発表しました。

32歳までに、全体の24%が有罪判決を受けていました。自己統制が最も高い5分の1では13%、最も低い5分の1では43%でした。

この差は、育った家庭の経済状況や知能(IQ)の違いを考えに入れても残りました。健康やお金の問題でも、同じような差が見られました。

03性格は運命ではない

自己統制の低さは犯罪の起こりやすさと関係しますが、それだけで一人ひとりの将来は決まりません。

表の数字をもう一度見てください。自己統制が最も低いグループでも、57%は有罪判決を受けていません。最も高いグループでも、13%は受けています。

さらに、子どものころから大人になるまでに自己統制が高まった人は、32歳での結果がよくなっていました。自己統制は、変わりうる力なのです。

ただし、この研究は観察にもとづくもので、実験ではありません。訓練で高めた場合にも同じ効果があるかは、この研究だけではまだはっきりしていません。

大人になってからの状況自己統制が高い5分の1低い5分の1
有罪判決を受けた13%43%
年収が2万NZドル未満10%32%
健康上の問題が複数ある11%27%
複数の物質への依存がある3%10%
ダニーデン研究:子どものころの自己統制と、大人になってからの状況(自己統制が最も高い5分の1と最も低い5分の1の比較)

あなたの場合は?

あとで後悔するとわかっていても、ついやってしまうことはありますか?それを防ぐ工夫は、性格のほかに何があるでしょう?

答えを書く必要はありません。少し思い浮かべるだけで、記憶に残りやすくなります。

覚えるのはこの3つ

  1. 自己統制は、目先の欲求をおさえ先を考えて動く力。反対が衝動性
  2. ダニーデン研究:自己統制が低い5分の1は43%、高い5分の1は13%が有罪に
  3. 性格は運命ではない。低くても多くは有罪にならず、自己統制は変わりうる

TERMSこのレッスンの用語

自己統制Self-control

目先の欲求や衝動をおさえ、長い目で見た目標に向けて行動する力。

衝動性Impulsivity

よく考える前に、思いついたまま行動してしまう傾向。

ダニーデン研究Dunedin Study

ニュージーランドのダニーデンで1972〜73年に生まれた1037人を、誕生から追い続けている縦断研究。

LESSON 3-2 の確認

確認問題(全3問)

本文を見ずに答えてみましょう。思い出そうとすることが、いちばんの復習になります。

Q1. ダニーデン研究で、子どものころの自己統制が最も低い5分の1のうち、32歳までに有罪判決を受けた人の割合はどれくらいだったでしょう?

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正解: 2. 約43%
最も低いグループは43%、最も高いグループは13%でした。ここがポイントです。低いグループでも、半分以上は有罪判決を受けていません。

Q2. 自己統制について、ダニーデン研究の結果に合うものはどれでしょう?

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正解: 3. 子どもから大人になるまでに自己統制が高まった人は、32歳での結果がよくなっていた
自己統制が高まった人ほど、32歳での結果がよくなっていました。自己統制の低さは起こりやすさと関係しますが、運命ではありません。

日常の場面で考える

Q3. 友だちが「あの子は小さいころからがまんが苦手だから、将来きっと犯罪をするよ」と言いました。このレッスンにもとづく考え方として、いちばん適切なものはどれでしょう?

答えを見る

正解: 2. 関係はあるが起こりやすさの話で、一人の将来は決めつけられない
惜しい選択肢もありますが、ここがポイントです。関係がまったくないわけではありません。ただ、研究が示すのはグループ全体の起こりやすさの差で、一人の将来を決めつける根拠にはなりません。

レッスン3-2はここまでです

迷った問題は、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。間違えた問題は復習ページに自動で入ります。

第3章 生物学と心理学からの説明 のレッスン一覧
  1. 3-1遺伝と環境
  2. 3-2衝動性と自己統制
  3. 3-3精神障害と犯罪

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出典(3件)
  1. Moffitt T. E. ほか「A gradient of childhood self-control predicts health, wealth, and public safety」PNAS 108(7), 2011(著者グループ公開の掲載版PDF、デューク大学)
  2. Duckworth A. L.「The significance of self-control」PNAS 108(7), 2011(同論文への解説、デューク大学公開PDF)
  3. Moffitt T. E. ほか「A gradient of childhood self-control predicts health, wealth, and public safety」研究概要(ファクトシート、デューク大学)