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第3章 生物学と心理学からの説明 ・ レッスン3-3精神障害と犯罪。よくある思い込みとデータ
約5分 ・ 公開日 2026-10-04
このレッスンの問い
「怖い事件の犯人には、心の病気のある人が多い」。あなたはそう思いますか?予想してから読んでみましょう。
読む前に、答えを少しだけ予想してみてください。当たっていなくても大丈夫です。
前のレッスンの復習(1問)
本文に入る前に、前のレッスンを思い出してみましょう。
Q1. 前のレッスンの復習です。ダニーデン研究で、子どものころの自己統制の差は、何を考えに入れても大人になってからの結果との関係が残ったでしょう?
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正解: 1. 育った家庭の経済状況と知能(IQ)
家庭の経済状況や知能の違いを考えに入れても、自己統制の差は残りました。自己統制そのものが大事だと考えられる理由です。
01検挙された人の99%以上は当てはまらない
日本の統計では、刑法犯で検挙された人のうち、精神障害者等は0.7%です。
令和6年版犯罪白書によると、2023(令和5)年に刑法犯で検挙された人のうち、精神障害者等の割合は0.7%でした。精神障害者等とは、精神障害のある人と、その疑いのある人を合わせた呼び方です。
つまり、検挙された人の99%以上は精神障害者等ではありません。ただし罪の種類別に見ると、放火では11.3%、殺人では5.9%と高めになっています。
たとえば事件のニュースで「通院歴があった」と伝えられると、強く記憶に残りますよね。けれども、目立つ事件だけを見ていると、全体の姿を見誤ります。
02暴力の大部分は、精神障害と関係なく起きている
スウェーデンの研究では、重い精神障害のある患者による暴力犯罪は、全体の約20件に1件でした。
2006年に発表された研究は、スウェーデンの全国の記録を使いました。統合失調症などの精神病で入院した約9万8千人を、犯罪の記録と照らし合わせたものです。
13年間の暴力犯罪のうち、こうした患者によるものは5.2%、およそ20件に1件でした。残りの約95%は、それ以外の人によるものです。
統合失調症などでは、暴力のリスクがやや高まるという研究もあります。2009年の研究のまとめでは、その高まりの多くは、薬物やアルコールの乱用(物質乱用)が重なることで説明できるとされました。
03加害より、被害に遭うことのほうがずっと多い
重い精神障害のある人は、暴力をふるうより、暴力の被害に遭うことのほうがずっと多いとわかっています。
2005年に発表されたアメリカ・シカゴの研究では、重い精神障害のある936人に、国の犯罪被害調査と同じ質問をしました。
1年間に暴力犯罪の被害に遭った人は4人に1人を超え、一般の人の11倍以上でした。研究者は、被害に遭う割合は暴力をふるう側になる割合(4〜13%)よりはるかに高いと述べています。
精神障害を「危ない」と結びつける見方は、データとは逆の向きなのです。病気や障害をもとにした偏見や決めつけをスティグマと呼びます。
| 調べたこと | 数字 | 出典 |
|---|---|---|
| 刑法犯で検挙された人のうち精神障害者等(日本・2023年) | 0.7% | 令和6年版犯罪白書 |
| 暴力犯罪のうち重い精神障害のある患者によるもの(スウェーデン・13年間) | 5.2%(約20件に1件) | Fazel・Grann 2006 |
| 1年間に暴力犯罪の被害に遭った重い精神障害のある人(シカゴ) | 25%超(一般の11倍以上) | Teplinほか 2005 |
あなたの場合は?
最近見た事件のニュースで、病名や通院歴が強調されていたことはありますか?そのとき、どんな印象を持ったか思い出してみましょう。
答えを書く必要はありません。少し思い浮かべるだけで、記憶に残りやすくなります。
覚えるのはこの3つ
- 刑法犯で検挙された人のうち、精神障害者等は0.7%(2023年)
- 暴力のリスクの高まりの多くは、物質乱用が重なることで説明される
- 重い精神障害のある人は、加害より被害に遭うほうがずっと多い
TERMSこのレッスンの用語
犯罪白書などで使われる言葉で、精神障害のある人と、その疑いのある人を合わせた呼び方。
薬物やアルコールを、健康や生活に害が出るほど使うこと。
病気や障害などをもとにした、偏見や決めつけ。
LESSON 3-3 の確認
確認問題(全3問)
本文を見ずに答えてみましょう。思い出そうとすることが、いちばんの復習になります。
Q1. 令和6年版犯罪白書で、2023年に刑法犯で検挙された人のうち、精神障害者等の割合はどれくらいでしょう?
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正解: 1. 約0.7%
0.7%です。検挙された人の99%以上は精神障害者等ではありません。
Q2. 2009年の研究のまとめで、統合失調症などでの暴力のリスクの高まりの多くを説明するとされたのはどれでしょう?
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正解: 2. 薬物やアルコールの乱用が重なること
ここがポイントです。リスクの高まりの多くは、物質乱用が重なることで説明できるとされました。病名だけで危険を決めつけることはできません。
Q3. 友人が「近所に精神科に通っている人がいるから、夜道が心配」と言いました。データにもとづく返し方として、いちばん近いのはどれでしょう?
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正解: 3. 精神障害のある人の大多数は暴力と無関係で、むしろ被害に遭いやすいとわかっている
惜しい選択をした人も、ここで確かめましょう。検挙された人のうち精神障害者等は0.7%で、重い精神障害のある人は被害に遭うことのほうがずっと多いのです。
出典(4件)
- 法務省 法務総合研究所「令和6年版 犯罪白書」第4編第10章第1節 精神障害のある者による犯罪等
- Fazel S., Grann M.「The population impact of severe mental illness on violent crime」American Journal of Psychiatry, 2006(PubMed)
- Fazel S. ほか「Schizophrenia and Violence: Systematic Review and Meta-Analysis」PLoS Medicine, 2009(PubMed Central)
- Teplin L. A. ほか「Crime Victimization in Adults With Severe Mental Illness: Comparison With the National Crime Victimization Survey」Archives of General Psychiatry, 2005(PubMed Central)