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第13章 犯罪予防と政策 ・ レッスン13-3

世界の犯罪と比べる。国際比較の読み方

約5分 ・ 公開日 2026-10-05

このレッスンの問い

「日本は世界でも安全な国」とよく聞きます。何の数字をどう比べれば、そう言えると思いますか?

読む前に、答えを少しだけ予想してみてください。当たっていなくても大丈夫です。

前のレッスンの復習(1問)

本文に入る前に、前のレッスンを思い出してみましょう。

レッスン13-2から

Q1. 前のレッスンの復習です。国の「登下校防犯プラン」(2018年)が、道路上で子どもが被害に遭う事件が集中しやすいと指摘した時間帯はどれでしょう?

答えを見る

正解: 2. 15〜18時の下校時間帯
下校の時間帯である15〜18時でした。そのためプランは、下校時の見守りの空白地帯を埋める「ながら見守り」を勧めています。

01比べるときは殺人が使われやすい

国ごとに犯罪の定義や数え方が違うため、国際比較では定義をそろえやすい殺人がよく使われます。

国どうしで窃盗の多さを比べたいとします。ところが、何を窃盗とするかは国の法律で違います。届け出やすさや、警察の記録の仕方・数え方も国ごとにばらばらです。

そこで国連は、統計用に殺人の意味をそろえています。死なせるか重いけがをさせるつもりで、人を違法に死なせること。これを意図的殺人と呼びます。

殺人の数は、警察などの記録と、死亡の統計の2つから別々に集められます。2つを照らし合わせて確かめられることも、比べやすさを支えています。

日本の警察が数える殺人には、未遂や同意殺人なども含まれます。2022年の殺人の認知件数は853件でした。一方、国連の統計で数える日本の2022年の殺人の被害者は289人です。

02日本の殺人の発生率はとても低い

2022年の日本の殺人の被害者は人口10万人あたり0.23人で、比べた主要国の中で最も低い水準です。

令和7年版の犯罪白書は、国連薬物・犯罪事務所(UNODC)のデータで各国を比べています。2022年の人口10万人あたりの殺人の被害者は、日本0.23人、韓国0.50人、米国6.51人でした。

国連のSDGs報告2026によると、世界全体では2024年に10万人あたり5.1人でした。2015年の5.9人から下がっています。

ただし白書も、各国の統計の取り方や精度は同じではないと注意しています。国が過去の数値を後から直すことも少なくありません。小さな差より、けた違いの差に注目するのが安全な読み方です。

03被害を直接たずねて比べる調査

警察の統計の違いを避けるため、同じ質問票で住民に被害を直接たずねる国際犯罪被害調査があります。

国際犯罪被害調査(ICVS)は1989年に14の先進工業国で始まり、1992年、1996年、2000年、2004〜05年と繰り返されました。各国で同じ質問票を使うので、法律や届け出の違いに左右されにくくなります。

日本は2000年の第4回に、法務総合研究所が参加しました。これが前に学んだ犯罪被害実態(暗数)調査の第1回です。

2004〜05年の調査では、30か国の平均で16%の人が、1年間に10種類の犯罪のどれかに遭っていました。日本はスペインなどと並び、最も低いグループでした。

それでも、空き巣に入られる心配をする人は、日本が最も多いグループでした。数字の上の安全と、感じる安心は別のものだとわかります。

国・地域年10万人あたり
日本2022年0.23人
韓国2022年0.50人
ドイツ2022年0.83人
英国2021年1.12人
フランス2022年1.24人
米国2022年6.51人
世界全体2024年5.1人
人口10万人あたりの殺人の被害者(令和7年版犯罪白書1-3-1-1表〔dataUNODC、2025年7月1日確認〕。世界全体は国連SDGs報告2026)

あなたの場合は?

海外旅行の前に行き先の治安を調べるとしたら、あなたはどの数字を、何と比べて確かめますか?

答えを書く必要はありません。少し思い浮かべるだけで、記憶に残りやすくなります。

覚えるのはこの3つ

  1. 国ごとに犯罪の定義や数え方が違うので、国際比較には定義をそろえやすい殺人が使われる
  2. 2022年の日本の殺人の被害者は10万人あたり0.23人。世界全体は2024年に5.1人
  3. ICVSは同じ質問票で住民に被害をたずね、警察統計の違いを避けて比べる

TERMSこのレッスンの用語

意図的殺人Intentional homicide

死なせるか重いけがをさせるつもりで、人を違法に死なせること。国連が国際比較のためにそろえた統計上の定義。

国連薬物・犯罪事務所(UNODC)United Nations Office on Drugs and Crime

薬物・犯罪の問題を扱う国連の機関。各国から犯罪と刑事司法の統計を集めて公表している。

国際犯罪被害調査(ICVS)International Crime Victims Survey

各国の住民に同じ質問票で犯罪の被害経験をたずね、国どうしを比べる調査。1989年に始まった。

LESSON 13-3 の確認

確認問題(全3問)

本文を見ずに答えてみましょう。思い出そうとすることが、いちばんの復習になります。

Q1. 犯罪の国際比較で、殺人がよく使われる理由として正しいものはどれでしょう?

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正解: 2. 統計用の定義をそろえやすく、警察と死亡統計の2つで確かめられるから
殺人は統計用の定義(意図的殺人)をそろえやすく、警察などの記録と死亡の統計を照らし合わせられます。数は各国が報告しており、国連が直接数えているわけではありません。

Q2. 国際犯罪被害調査(ICVS)の特徴として正しいものはどれでしょう?

答えを見る

正解: 3. 各国の住民に同じ質問票で被害の経験をたずねる
ここがポイントです。同じ質問票で住民に直接たずねるので、各国の法律や届け出の違いに左右されにくくなります。

日常の場面で考える

Q3. 友人が「A国の窃盗の認知件数は日本の10倍。だから10倍危険だ」と言いました。最初に確かめたいことはどれでしょう?

答えを見る

正解: 1. A国と日本で、窃盗の定義や届け出・数え方が同じかどうか
惜しい視点もありますが、まずは数え方です。定義や届け出やすさ、記録の仕方が違えば、認知件数はそのまま比べられません。人口の違いも10万人あたりに直して比べましょう。

レッスン13-3はここまでです

迷った問題は、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。間違えた問題は復習ページに自動で入ります。

第13章 犯罪予防と政策 のレッスン一覧
  1. 13-1エビデンスにもとづく刑事政策
  2. 13-2地域の防犯活動と見守り
  3. 13-3犯罪の国際比較

講座の目次(全14章)へ

出典(8件)
  1. 法務省 法務総合研究所『令和7年版 犯罪白書』第1編第3章第1節「諸外国における犯罪」
  2. 法務省 法務総合研究所『令和7年版 犯罪白書』第1編第3章第1節1「殺人」(1-3-1-1表)
  3. 法務省 法務総合研究所『令和7年版 犯罪白書』第1編第1章第2節5「その他の刑法犯」(1-1-2-12図)
  4. 法務省 法務総合研究所『令和7年版 犯罪白書』凡例(罪名に含まれるもの)
  5. 法務省 法務総合研究所『令和7年版 犯罪白書』第7編第4章第1節1「調査の意義」
  6. United Nations Statistics Division「SDG indicator metadata 16.1.1 Number of victims of intentional homicide per 100,000 population」
  7. United Nations「The Sustainable Development Goals Report 2026」Goal 16
  8. van Dijk J., van Kesteren J., Smit P.「Criminal Victimisation in International Perspective: Key findings from the 2004-2005 ICVS and EU ICS」WODC, 2007