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第6章 環境犯罪学と状況的犯罪予防 ・ レッスン6-1

日常活動理論。犯罪が起きる3つの条件

約5分 ・ 公開日 2026-10-04

このレッスンの問い

暮らしが豊かになり、貧困が減った。それでも犯罪が大きく増えることはあると思いますか?

読む前に、答えを少しだけ予想してみてください。当たっていなくても大丈夫です。

01暮らしが良くなったのに、犯罪が増えた

1960年代のアメリカでは、貧困が減るなど暮らしが良くなったのに、犯罪は大きく増えました。

1960年から1975年に、アメリカで警察が把握した強盗の発生率は263%、侵入盗は200%増えました。同じころ、都市で貧困線より下で暮らす人は減っていました。

それまでの理論の多くは、犯罪をする人がなぜ増えるのかを考えてきました。けれども、原因とされた貧困などの条件は、むしろ良くなっていたのです。

この食い違いに別の角度から答えたのが、コーエンとフェルソンです。1979年、学術誌「American Sociological Review」の論文で新しい見方を示しました。

02犯罪が起きる3つの条件

犯罪は、動機のある人、ふさわしい標的、有能な監視者の不在の3つが、同じ時と場所にそろったときに起きます。

盗みや暴力のように、人や物に直接手を出す犯罪を考えます。そこには、やる気と力のある人、狙われる人や物、止められる人がいない状況の3つが必要です。

論文は、このうち1つが欠けるだけで、ふつう犯罪は防がれると強調しました。この考え方を日常活動理論と呼びます。

ここでいう監視者は、警察官だけではありません。家族や隣人、通りかかる人など、ふだんの暮らしの中で人や物を見守る人も含みます。

たとえば、朝に家族全員が仕事や学校へ出かけた家。盗もうと考える人が近くを通り、留守だと気づけば、3つの条件がそろいます。

03留守の家と、軽くなった家電

共働きや一人暮らしで日中の留守宅が増え、持ち運びやすい家電も増えたことが、犯罪を増やしたと論文は考えました。

1960年から1970年に、既婚女性で働く人の割合は31%増えました。一人暮らしなど、家族と住まない人の割合も34%増えています。

国勢調査局の調査員が午前8時台に訪ねたとき、14歳以上の人が誰もいない家は1960年の29%から1971年には43%になりました。侵入盗のうち日中の住宅を狙ったものも、1960年の16%から1975年の33%に増えています。

標的の側も変わりました。大手小売店のカタログで最も軽いテレビは、1960年の38ポンド(約17kg)から、1970年には15ポンド(約7kg)になりました。

大事なのは、犯罪をする人が増えたと考えなくても、犯罪の増加を説明できる点です。標的が増えて見守りが減れば、3つが重なる機会が増えるからです。

条件意味原典の例(1960年代のアメリカ)
動機のある人犯罪をする気と力がある人増えたと仮定しなくても、犯罪の増加を説明できるとした
ふさわしい標的狙われやすい人や物軽くなったテレビなど、持ち運べる家電
有能な監視者の不在止められる人がその場にいない日中に誰もいない家が増えた
日常活動理論の3つの条件。1つでも欠ければ、ふつう犯罪は起きない

あなたの場合は?

あなたの家や身の回りで、「見守る人がいない」時間帯や場所は、いつ・どこでしょうか?

答えを書く必要はありません。少し思い浮かべるだけで、記憶に残りやすくなります。

覚えるのはこの3つ

  1. 犯罪は、動機のある人・ふさわしい標的・有能な監視者の不在がそろうと起きる
  2. 3つのうち1つが欠ければ、ふつう犯罪は起きない。監視者には家族や隣人も含まれる
  3. 犯罪をする人が増えなくても、留守宅や盗みやすい物が増えれば犯罪は増えうる

TERMSこのレッスンの用語

日常活動理論Routine activity theory

動機のある人・ふさわしい標的・有能な監視者の不在の3つが、同じ時と場所にそろうと犯罪が起きると考える理論。

ふさわしい標的Suitable target

犯罪をしようとする人から見て、狙いやすい人や物。

有能な監視者Capable guardian

その場にいて犯罪を止められる人。警察官だけでなく、家族や隣人、通行人も含む。

LESSON 6-1 の確認

確認問題(全3問)

本文を見ずに答えてみましょう。思い出そうとすることが、いちばんの復習になります。

Q1. 日常活動理論で、犯罪が起きるのに必要とされる3つの条件の組み合わせはどれでしょう?

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正解: 1. 動機のある人・ふさわしい標的・有能な監視者の不在
3つの条件は、動機のある人、ふさわしい標的、有能な監視者の不在です。これらが同じ時と場所にそろうと犯罪が起きると考えます。

Q2. コーエンとフェルソンが、1960年代のアメリカで犯罪が増えた理由として重視したのはどれでしょう?

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正解: 2. 家の外での活動が増え、留守宅や持ち運べる品物が増えた
ここがポイントです。当時は貧困などの条件はむしろ良くなっていました。論文は、暮らし方の変化で犯罪の機会が増えたことに注目しました。

日常の場面で考える

Q3. ある住宅街で、平日の昼間の空き巣が増えました。日常活動理論でいちばん説明しやすい変化はどれでしょう?

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正解: 1. 昼間に家にいる人が減った
昼間に家にいる人が減ると、見守る人がいない家が増えます。3つの条件のうち「有能な監視者の不在」がそろいやすくなるのです。

レッスン6-1はここまでです

迷った問題は、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。間違えた問題は復習ページに自動で入ります。

第6章 環境犯罪学と状況的犯罪予防 のレッスン一覧
  1. 6-1日常活動理論
  2. 6-2状況的犯罪予防
  3. 6-3防犯環境設計
  4. 6-4割れ窓理論
  5. 6-5ホットスポット

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出典(2件)
  1. Cohen L. E., Felson M.「Social Change and Crime Rate Trends: A Routine Activity Approach」American Sociological Review 44(4), 588-608, 1979(ワシントン大学の授業資料として公開されたPDF)
  2. Tewksbury R. A., Mustaine E. E.「Cohen, Lawrence E., and Marcus K. Felson: Routine Activity Theory」Encyclopedia of Criminological Theory, SAGE, 2010