HOME / ゼロから学ぶ犯罪学 / 講座 / 第12章 犯罪の種類を知る / 性犯罪。法改正と暗数

第12章 犯罪の種類を知る ・ レッスン12-3

性犯罪の法改正と暗数。不同意性交等罪で何が変わったのか

約5分 ・ 公開日 2026-10-05

このレッスンの問い

性的な被害に遭った人のうち、警察に届けるのはどのくらいの割合だと思いますか?

読む前に、答えを少しだけ予想してみてください。当たっていなくても大丈夫です。

前のレッスンの復習(1問)

本文に入る前に、前のレッスンを思い出してみましょう。

レッスン12-2から

Q1. 前のレッスンの復習です。傷害と暴行で、被害者が親族だった割合は、1997年と2024年を比べてどう変わったでしょう?

答えを見る

正解: 2. 大きく上がり、どちらも2割台になった
1997年は傷害4.5%・暴行1.3%でしたが、2024年は傷害24.0%・暴行27.7%でした。家の中の暴力が統計に表れるようになっています。

被害に遭ったときの相談先

この講座は学習用で、個別の相談の代わりにはなりません。被害に遭ったときは、一人で抱え込まずに公的な相談窓口を利用できます。いま危険が迫っているときは110番に通報してください。

出典: 警察庁「支援一覧」、法テラス「お電話でのお問合せ(法テラス・サポートダイヤル)」

012017年。性別を問わず、告訴がなくても起訴できる罪に

2017年の改正で強姦罪は強制性交等罪に変わり、被害者の性別を問わず、告訴がなくても起訴できる罪になりました。

2017年7月13日に施行された刑法の改正で、強姦罪は強制性交等罪に改められました。それまでは女性への性交だけが対象でしたが、被害者の性別を問わなくなり、対象の行為も広がりました。

法定刑の下限は、懲役3年から5年に引き上げられました。親など18歳未満の子を監護する人が、その影響力に乗じる行為を罰する規定もできました。

以前の性犯罪は、被害者の告訴がなければ起訴できない親告罪でした。改正でこの規定が削られ、告訴がなくても起訴できる非親告罪になりました。

022023年。「同意しない意思」を軸にした不同意性交等罪

2023年の改正で、同意しない意思を持つ・示す・貫くことが難しい状態での行為を罰する不同意性交等罪ができました。

2023年7月13日の施行で、強制性交等罪は不同意性交等罪、強制わいせつ罪は不同意わいせつ罪に変わりました。暴行や脅迫だけでなく、酔いや眠り、強い驚き、立場による影響など8つの例が条文に並びます。

これらで同意しない意思を持つこと、示すこと、貫くことが難しい状態での行為が罰せられます。婚姻関係があってもなくても同じです。

性交同意年齢は13歳から16歳に引き上げられました。相手が13〜15歳の場合は、5歳以上年上の人の行為が罰せられます。

公訴時効も5年延び、不同意性交等罪は15年、不同意わいせつ罪は12年になりました。被害時に18歳未満なら、18歳になるまでの期間がさらに足されます。

法務省は延長の理由に、恥ずかしさや「自分が悪い」という気持ちから、被害を打ち明けにくいことを挙げています。

03数字に表れるのは一部だけ

性犯罪は届け出が少なく、統計に表れない暗数がとても大きい犯罪です。

令和7年版犯罪白書によると、2024年の不同意性交等の認知件数は3,936件で、前年より45.2%増えました。不同意わいせつも6,992件で、14.7%の増加です。

ただし、法改正で対象の行為が広がったため、前の年とそのまま比べることはできません。件数の増減だけで、被害が増えたか減ったかは判断できないのです。

法務総合研究所の被害調査で、性的な被害を届けた割合は第1回(2000年)の1割弱から、第6回(2024年)の2割台半ばに上がりました。それでも、およそ4件に3件は届けられていない計算です。

内閣府の2023年度の調査では、不同意性交等の被害に遭った人の55.7%が、どこにも相談していませんでした。相談した人でも、約2割は被害から10年以上たってからでした。

たとえば、友人が何年も前の被害を初めて打ち明けてくれることがあります。長く話せなかったのは珍しいことではなく、責任は加害した側にあります。

項目2017年改正の前2017年改正2023年改正
罪名強姦罪強制性交等罪不同意性交等罪
被害者の性別女性のみ問わない問わない
告訴がなくても起訴できるかできない(親告罪)できる(非親告罪)できる
性交同意年齢13歳13歳16歳(13〜15歳は5歳以上年上の相手)
公訴時効10年10年15年(18歳未満の被害は18歳までの期間を加算)
性犯罪の規定はどう変わったか(法務省の資料とe-Gov法令検索の刑法・刑事訴訟法をもとに作成)

あなたの場合は?

身近な人が何年も前の被害を打ち明けてくれたら、あなたはまず何と声をかけますか?

答えを書く必要はありません。少し思い浮かべるだけで、記憶に残りやすくなります。

覚えるのはこの3つ

  1. 2017年改正:強制性交等罪に。性別を問わず、告訴がなくても起訴できる
  2. 2023年改正:不同意性交等罪に。性交同意年齢は16歳、公訴時効は5年延長
  3. 暗数が大きい。届け出は2割台半ば、どこにも相談しない人が半数を超える

TERMSこのレッスンの用語

不同意性交等罪Non-consensual sexual intercourse

同意しない意思を持つ・示す・貫くことが難しい状態で行われた性交等を罰する罪。2023年の刑法改正でできた。

非親告罪Offense prosecutable without complaint

被害者の告訴がなくても、検察官が起訴できる犯罪。性犯罪は2017年の改正で非親告罪になった。

公訴時効Statute of limitations for prosecution

犯罪が終わってから一定の期間がたつと、起訴できなくなる制度。その期間のこと。

LESSON 12-3 の確認

確認問題(全3問)

本文を見ずに答えてみましょう。思い出そうとすることが、いちばんの復習になります。

Q1. 2023年の刑法改正で、性交同意年齢はどうなったでしょう?

答えを見る

正解: 2. 16歳に引き上げられた
13歳から16歳に引き上げられました。相手が13〜15歳の場合は、5歳以上年上の人の行為が罰せられる点もポイントです。

Q2. 2017年の改正で、性犯罪が「非親告罪」になりました。どういう意味でしょう?

答えを見る

正解: 1. 被害者の告訴がなくても起訴できる
以前は被害者の告訴がないと起訴できない親告罪でした。改正で、告訴がなくても起訴できるようになりました。

日常の場面で考える

Q3. ニュースで「不同意性交等の認知件数が前年より45%増えた」と聞きました。読み方としてふさわしいのはどれでしょう?

答えを見る

正解: 2. 法改正で対象が広がったことや、届け出の少なさも考えて読む
惜しい読み方もありますが、ここがポイントです。対象の行為が広がり、届けられる被害は一部だけです。件数だけで被害の増減は判断できません。

レッスン12-3はここまでです

迷った問題は、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。間違えた問題は復習ページに自動で入ります。

第12章 犯罪の種類を知る のレッスン一覧
  1. 12-1窃盗の動向
  2. 12-2暴力犯罪の動向
  3. 12-3性犯罪。法改正と暗数
  4. 12-4特殊詐欺
  5. 12-5サイバー犯罪

講座の目次(全14章)へ

出典(7件)
  1. 法務省「性犯罪関係の法改正等 Q&A」
  2. 法務省「刑法の一部を改正する法律の概要(平成29年7月13日施行)」
  3. e-Gov法令検索「刑法」(明治40年法律第45号)第176条・第177条
  4. e-Gov法令検索「刑事訴訟法」(昭和23年法律第131号)第250条
  5. 法務省 法務総合研究所『令和7年版 犯罪白書』第1編第1章第2節4「不同意性交等・不同意わいせつ等」
  6. 法務省 法務総合研究所『令和7年版 犯罪白書』第7編第4章第3節1「過去5年間の被害率・被害申告率」
  7. 内閣府男女共同参画局「『男女間における暴力に関する調査』(令和5年度)調査結果のポイント」