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第12章 犯罪の種類を知る ・ レッスン12-4

特殊詐欺。なぜ高齢者が狙われるのか

約5分 ・ 公開日 2026-10-05

このレッスンの問い

特殊詐欺の被害に遭った人のうち、65歳以上はどのくらいだと思いますか? それはなぜでしょう?

読む前に、答えを少しだけ予想してみてください。当たっていなくても大丈夫です。

前のレッスンの復習(1問)

本文に入る前に、前のレッスンを思い出してみましょう。

レッスン12-3から

Q1. 前のレッスンの復習です。2023年の刑法改正で、性犯罪の公訴時効はどうなったでしょう?

答えを見る

正解: 1. 5年延びた
被害を打ち明けにくいことを理由に、5年延びました。不同意性交等罪は15年です。被害時に18歳未満なら、18歳までの期間も足されます。

被害に遭ったときの相談先

この講座は学習用で、個別の相談の代わりにはなりません。被害に遭ったときは、一人で抱え込まずに公的な相談窓口を利用できます。いま危険が迫っているときは110番に通報してください。

出典: 警察庁「支援一覧」、法テラス「お電話でのお問合せ(法テラス・サポートダイヤル)」

0165歳以上が件数の約半分、被害額の約6割

2025年の特殊詐欺の被害は、65歳以上が法人を除く件数の51.3%、被害額の59.2%を占めました。

警察庁の確定値によると、2025年(令和7年)の特殊詐欺の認知件数は27,832件でした。被害額は約1,423.1億円で、前の年のほぼ2倍です。

このうち65歳以上の被害は14,273件、被害額は841.1億円でした。件数より金額の割合が高いのは、1件あたりの被害額が大きいためです。

一方で、高齢者の割合は前の年より14.0ポイント下がりました。20代と30代の被害が大きく増えたためです。警察庁も、犯人と接触してしまえば誰もがだまされるおそれがあると書いています。

02狙われやすいのは、条件がそろいやすいから

高齢者が狙われやすい背景には、本人の注意力とは別に、家の電話で接触されやすく、1件の被害額が大きいという条件があります。

警察庁の資料では、60代以上は固定電話から始まる被害が多く、20〜50代は携帯電話が多くなっています。家の電話は、犯人が相手を選ばずにかけられる入り口になっていると考えられます。

第6章で学んだ日常活動理論で見てみましょう。犯罪は、動機のある人・ふさわしい標的・見守る人の不在がそろうと起きやすくなります。

たとえば、一人暮らしの人が昼間に家で電話を受け、その場で相談できる相手がいない場面です。犯人にとっては、止める人のいない状態です。こうして3つの条件がそろいやすくなります。

03だまされやすさは、年齢より条件で変わる

研究では、年齢そのものより、記憶などの働きの低下や気分の落ち込み、人とのつながりの不足が関係すると報告されています。

アメリカの研究は、認知症ではない高齢者730人を調べました。軽度認知障害がある人は、詐欺への乗りやすさを測る質問票の点数が高めでした。

別の研究は、中高年4,661人を4年間追いかけました。強い気分の落ち込みがあり、人とのつながりが最も満たされていない人は、新たな被害が8.7%でした。ほかの人の4.1%の2倍を超えています。

ただし、高齢者が他の年代より詐欺に遭いやすいという、はっきりした証拠はないとする研究のまとめもあります。経験の多さなど、年を重ねて身につく守りもあるからです。

条件根拠
家の電話で接触されやすい60代以上は固定電話から始まる被害が多い(警察庁、2025年)
1件の被害額が大きい65歳以上は件数の51.3%、被害額の59.2%(同)
記憶などの働きの低下軽度認知障害のある人で乗りやすさの点数が高め(730人の研究)
落ち込みと、つながりの不足4年間の新たな被害が8.7%、ほかの人は4.1%(4,661人の追跡)
特殊詐欺の被害に遭いやすくなる条件(統計と研究から)

あなたの場合は?

あなたや家族が、急にお金の話が出る電話を受けたとします。その場ですぐ相談できる人は誰ですか?

答えを書く必要はありません。少し思い浮かべるだけで、記憶に残りやすくなります。

覚えるのはこの3つ

  1. 2025年の特殊詐欺は27,832件・約1,423億円。65歳以上が件数の51.3%
  2. 高齢者が狙われやすい背景には、家の電話で接触されやすく被害額が大きいという条件がある
  3. だまされやすさは年齢より条件(認知機能・落ち込み・孤立)で変わり、誰でも被害に遭いうる

TERMSこのレッスンの用語

特殊詐欺Special fraud

電話などで対面せずに相手を信頼させ、振込みなどの方法で不特定多数の人から現金などをだまし取る犯罪の総称。

軽度認知障害Mild cognitive impairment (MCI)

記憶などの認知機能が年齢相応より低下しているが、日常生活はおおむね自立しており、認知症ではない状態。

日常活動理論Routine activity theory

動機のある人、ふさわしい標的、見守る人の不在の3つがそろうと犯罪が起きやすいと考える理論。

LESSON 12-4 の確認

確認問題(全3問)

本文を見ずに答えてみましょう。思い出そうとすることが、いちばんの復習になります。

Q1. 2025年の特殊詐欺で、65歳以上の被害が法人を除く認知件数に占めた割合に近いものはどれでしょう?

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正解: 2. 約5割
65歳以上は14,273件で、法人を除く件数の51.3%でした。被害額では59.2%と、さらに高くなります。

Q2. 中高年4,661人を4年間追いかけた研究で、新たな詐欺被害が2倍を超えて多かったのはどんな人でしょう?

答えを見る

正解: 2. 強い気分の落ち込みがあり、人とのつながりが満たされていない人
ここがポイントです。年齢の高さではなく、落ち込みとつながりの不足が重なった人で、被害が8.7%と高くなっていました。

日常の場面で考える

Q3. 知人が「特殊詐欺に遭うのは、注意が足りないお年寄りだけ」と話しています。このレッスンの内容に照らして、いちばん適切な返し方はどれでしょう?

答えを見る

正解: 2. 20代や30代の被害も増えていて、条件が重なれば誰でも遭いうる
惜しい選択肢もありますが、ここがポイントです。2025年は20代・30代の被害が大きく増えました。警察庁も、接触してしまえば誰もがだまされるおそれがあるとしています。

レッスン12-4はここまでです

迷った問題は、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。間違えた問題は復習ページに自動で入ります。

第12章 犯罪の種類を知る のレッスン一覧
  1. 12-1窃盗の動向
  2. 12-2暴力犯罪の動向
  3. 12-3性犯罪。法改正と暗数
  4. 12-4特殊詐欺
  5. 12-5サイバー犯罪

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出典(5件)
  1. 警察庁「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)」2026年6月5日
  2. 警察庁 SOS47「令和7年の特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等(確定値)」資料2
  3. Han S. D., Boyle P. A., James B. D., Yu L., Bennett D. A.「Mild Cognitive Impairment and Susceptibility to Scams in Old Age」Journal of Alzheimer's Disease, 2016(PubMed Central)
  4. Lichtenberg P. A. ほか「Psychological and Functional Vulnerability Predicts Fraud Cases in Older Adults: Results of a Longitudinal Study」Clinical Gerontologist, 2016(PubMed Central)
  5. Ross M., Grossmann I., Schryer E.「Contrary to Psychological and Popular Opinion, There Is No Compelling Evidence That Older Adults Are Disproportionately Victimized by Consumer Fraud」Perspectives on Psychological Science, 2014(PubMed)