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第1章 犯罪学とは何か ・ レッスン1-4

犯罪学はどう研究するのか。追跡調査と実験

約5分 ・ 公開日 2026-10-04

このレッスンの問い

「子どものころの何が、大人になってからの犯罪につながるのか」。どうすれば確かめられると思いますか?

読む前に、答えを少しだけ予想してみてください。当たっていなくても大丈夫です。

前のレッスンの復習(1問)

本文に入る前に、前のレッスンを思い出してみましょう。

レッスン1-3から

Q1. 前のレッスンの復習です。暗数を推し量るために、法務総合研究所が行っている調査はどれでしょう?

答えを見る

正解: 2. 住民に被害の経験と届け出の有無を直接たずねる調査
犯罪被害実態(暗数)調査は、無作為に選んだ住民に直接たずねる調査でした。統計に入らない被害を知るための方法です。

01研究の方法は大きく3つ

犯罪学のおもな研究方法は、量をつかむ、同じ人を長く追う、比べて効果を確かめる、の3つです。

これまで見た認知件数や暗数の調査は、社会全体の犯罪の量をつかむ方法でした。けれども、なぜ犯罪が始まるのか、何をすれば減るのかは、それだけではわかりません。

そこで犯罪学では、同じ人を何年も追いかける研究と、取り組みの効果を比べて確かめる研究も使います。知りたいことに合わせて方法を選ぶのが大切です。

02同じ人を何十年も追いかける

同じ人を長い年月追いかける研究を縦断研究と呼び、犯罪の始まりから終わりまでを調べられます。

有名な例が、イギリスのケンブリッジ非行発達研究です。1961〜62年に8〜9歳だったロンドンの男子411人を、長く追いかけてきました。

研究を始めたのはウェストで、1969年からファリントンが加わり、のちに研究を率いました。

本人への面接は48歳まで、公的な記録は61歳まで調べています。親や教師、本人の子どもからも話を聞いています。

子どものころの記録を先にとっておくので、あとからの思い出し違いの影響を受けにくくなります。このように同じ人を追う研究を縦断研究と呼びます。

03無作為に分けて効果を比べる

取り組みの効果を確かめるには、対象を無作為に分けて比べるランダム化比較試験が役立ちます。

犯罪が集中する小さな場所を、ホットスポットと呼びます。そこで警察の見回りを増やすと、犯罪は減るでしょうか。増やす場所と増やさない場所を無作為に分けて比べる方法を、ランダム化比較試験と呼びます。

2019年に発表された研究のまとめ(系統的レビュー)は、この取り組みの研究を65件集めました。そのうち27件がランダム化比較試験でした。

結果は、犯罪は小さいながらも統計的にはっきり減っていました。周りの場所に犯罪が移るとは限らず、むしろ周りでも減る傾向が見られました。

知りたいこと方法例
社会全体の犯罪の量公式統計犯罪白書の認知件数
統計に入らない被害被害調査犯罪被害実態(暗数)調査
犯罪の始まりと終わり縦断研究ケンブリッジ非行発達研究
取り組みの効果ランダム化比較試験ホットスポットでの見回り
犯罪学のおもな研究方法と、わかること

あなたの場合は?

「夜道の街灯を増やすと犯罪は減るのか」をあなたが調べるとしたら、何と何を比べますか?

答えを書く必要はありません。少し思い浮かべるだけで、記憶に残りやすくなります。

覚えるのはこの3つ

  1. 研究方法は3つ。量をつかむ・同じ人を長く追う・比べて効果を確かめる
  2. 縦断研究は同じ人を長く追う(例:ロンドンの男子411人)
  3. ランダム化比較試験は、無作為に分けて取り組みの効果を比べる

TERMSこのレッスンの用語

縦断研究Longitudinal study

同じ人たちを長い年月追いかけ、何度も調べる研究方法。

ランダム化比較試験Randomized controlled trial

対象を無作為に分け、取り組みを行う群と行わない群を比べて効果を確かめる方法。

ホットスポットCrime hot spot

犯罪が集中して起きている小さな場所。

LESSON 1-4 の確認

確認問題(全3問)

本文を見ずに答えてみましょう。思い出そうとすることが、いちばんの復習になります。

Q1. ケンブリッジ非行発達研究は、どのような方法の研究でしょう?

答えを見る

正解: 1. 同じ411人の男子を長い年月追いかけた
8〜9歳だった411人を、面接では48歳まで、公的記録では61歳まで追いかけた縦断研究です。

Q2. ランダム化比較試験の特徴として正しいものはどれでしょう?

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正解: 3. 取り組みを行う所と行わない所を無作為に分けて比べる
無作為に分けることで、取り組み以外の条件の違いが結果に混ざりにくくなります。ここがこの方法の強みです。

日常の場面で考える

Q3. 市が「防犯カメラを付けた商店街で、翌年に犯罪が減った」と発表しました。カメラの効果だと確かめるために、いちばん足りないものはどれでしょう?

答えを見る

正解: 1. 付けていない似た場所でも犯罪が減ったかどうかの比較
惜しい視点もありますが、ここがポイントです。犯罪は全体でも増減します。付けていない似た場所と比べないと、カメラの効果かどうかはわかりません。

レッスン1-4はここまでです

迷った問題は、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。間違えた問題は復習ページに自動で入ります。

第1章 犯罪学とは何か のレッスン一覧
  1. 1-1犯罪学とは何か
  2. 1-2認知件数と犯罪白書
  3. 1-3暗数とは何か
  4. 1-4犯罪学の研究方法

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出典(2件)
  1. Jolliffe D. ほか「Contemporary Developments in the Cambridge Study in Delinquent Development: David Farrington's Legacy」(PubMed Central)
  2. Braga A. A., Turchan B., Papachristos A. V., Hureau D. M.「Hot spots policing of small geographic areas effects on crime」Campbell Systematic Reviews, 2019(PubMed Central)