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第6章 環境犯罪学と状況的犯罪予防 ・ レッスン6-5ホットスポット。犯罪はなぜ一部の場所に集まるのか
約5分 ・ 公開日 2026-10-04
このレッスンの問い
あなたの町で起きる犯罪の半分は、町のどれくらいの場所で起きていると思いますか?予想してから読んでみましょう。
読む前に、答えを少しだけ予想してみてください。当たっていなくても大丈夫です。
前のレッスンの復習(1問)
本文に入る前に、前のレッスンを思い出してみましょう。
Q1. 前のレッスンの復習です。1990年代のニューヨークで犯罪が大きく減ったことについて、正しいものはどれでしょう?
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正解: 2. 警察の組織改革や薬物流行の終わりなども重なり、割れ窓理論だけでは説明できない
同じ時期に組織改革や薬物クラックの流行の終わりが重なり、取り締まりを強めなかった都市でも犯罪は減りました。一つの理論だけで説明しないことがポイントです。
01通報の半分は、3%の場所から来ていた
シャーマンらは1989年、ミネアポリスの警察への通報の半分が、市内の約3%の場所に集中していたと示しました。
シャーマン、ガーティン、ビュルガーの3人は、アメリカのミネアポリス市で警察への通報を1年分調べました。通報は32万3979件、対象は市内の住所と交差点のすべて、約11万5000か所です。
すると、通報の50%は、わずか3%の場所から寄せられていました。強盗の通報はすべて2.2%の場所に、自動車盗の通報はすべて2.7%の場所に集まっていました。
このように犯罪が集中して起きる小さな場所を、ホットスポットと呼びます。偏りは、偶然に散らばると仮定した計算よりはっきり大きいものでした。
02都市が違っても、犯罪の半分は2〜6%の通りに
ワイスバードは2015年、都市が違っても犯罪の半分は通りの2〜6%ほどに集まると示し、これを犯罪の集中の法則と呼びました。
犯罪学者のワイスバードは、8つの都市の犯罪を同じ物差しで比べました。単位にしたのは、交差点から次の交差点までの、通りの一区画です。
犯罪の50%は通りの2.1〜6.0%に、25%はわずか0.4〜1.6%に集まっていました。長く記録のある4都市では、犯罪の件数が年ごとに増減しても、この割合はほぼ変わりませんでした。
都市や年が変わっても、集中の度合いは狭い幅に収まる。ワイスバードはこれを犯罪の集中の法則と呼び、場所に注目する研究(場所の犯罪学)にもっと力を注ぐべきだと訴えました。
03日本の都市でも、犯罪は偏っていた
東京と大阪でも地区ごとに見ると犯罪の偏りが確かめられ、偏り方は犯罪の種類によって違いました。
筑波大学の雨宮護と大山智也は2019年、東京23区と大阪市の2008〜2017年の財産犯を調べました。警察が公開している地区ごとの件数で、8種類の犯罪の偏りを比べています。
最も偏っていたのは、店などをねらった侵入盗でした。狙われる店そのものが町の一部に偏ってあるためだと、著者らは考えています。車上ねらいや自動販売機ねらいは、比較的散らばっていました。
犯罪の総数が減っても、集中の度合いは変わらないか、むしろ強まっていました。ただし地区は通りの一区画より広く、これだけで日本でも法則が成り立つとまでは言えないと、著者ら自身が書いています。
身近な例で言えば、同じ町の中でも、自転車がよく盗まれる駐輪場とそうでない駐輪場があるような偏りです。こうした場所に見回りを集めた実験の結果は、第1章の「犯罪学はどう研究するのか」で見ました。
| 研究 | 場所の単位 | わかったこと |
|---|---|---|
| シャーマンら(1989年、ミネアポリス) | 住所と交差点 | 通報の50%が約3%の場所に |
| ワイスバード(2015年、8都市) | 通りの一区画 | 犯罪の50%が2.1〜6.0%の通りに |
| 雨宮・大山(2019年、東京・大阪) | 地区 | 店などへの侵入盗が最も偏っていた |
あなたの場合は?
あなたの町で、事件の話をよく聞く場所を思い浮かべてください。それは町全体のうち、どれくらいの広さでしょうか?
答えを書く必要はありません。少し思い浮かべるだけで、記憶に残りやすくなります。
覚えるのはこの3つ
- 犯罪は町じゅうに散らばらず、ごく一部の小さな場所(ホットスポット)に集まる
- ミネアポリスでは通報の50%が約3%の場所から。多くの都市で犯罪の50%は通りの2〜6%に
- 集中の度合いは都市や年が変わっても狭い幅に収まる(犯罪の集中の法則)。東京・大阪でも偏りがあった
TERMSこのレッスンの用語
犯罪が集中して起きている、交差点や通りの一区画などの小さな場所。
都市や年が違っても、犯罪の一定の割合(例えば半分)が集まる場所の割合は、狭い幅に収まるという考え方。
人ではなく、通りの一区画や住所などの小さな場所に注目して犯罪を調べる研究分野。
LESSON 6-5 の確認
確認問題(全3問)
本文を見ずに答えてみましょう。思い出そうとすることが、いちばんの復習になります。
Q1. シャーマンらがミネアポリスの通報を調べてわかったことはどれでしょう?
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正解: 2. 通報の半分が、市内の約3%の場所から寄せられていた
約11万5000か所のうち、わずか3%ほどの場所から通報の半分が寄せられていました。犯罪は町じゅうに散らばってはいなかったのです。
Q2. 犯罪の集中の法則の内容として正しいものはどれでしょう?
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正解: 3. 都市や年が違っても、犯罪の集中の度合いは狭い幅に収まる
ここがポイントです。8つの都市で、犯罪の半分は通りの2.1〜6.0%に集まっていました。件数が増減しても、集中の度合いはほぼ変わりませんでした。
Q3. ある市が、限られた防犯の予算の使い道を考えています。このレッスンの研究にいちばん合う考え方はどれでしょう?
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正解: 2. 犯罪が集まる小さな場所を地図で確かめ、そこを優先する
惜しい選択をした人も、ここで確かめましょう。犯罪はごく一部の場所に集まるので、まずその場所を確かめると、限られた予算を生かしやすくなります。
出典(4件)
- Sherman L. W., Gartin P. R., Buerger M. E.「Hot spots of predatory crime: Routine activities and the criminology of place」Criminology 27(1), 1989(要旨)
- Weisburd D.「The law of crime concentration and the criminology of place」Criminology 53(2), 2015(要旨)
- Haberman C. P., Sorg E. T., Ratcliffe J. H.「Assessing the validity of the law of crime concentration across different temporal scales」Journal of Quantitative Criminology 33, 2017
- Amemiya M., Ohyama T.「Toward a test of the “Law of Crime Concentration” in Japanese cities: a geographical crime analysis in Tokyo and Osaka」Crime Science 8, 2019(筑波大学リポジトリ)